研修参加記録

第4回NHO宇都宮病院 看護・介護連携懇談会

令和1年11月19日

18時20分~第一会議室にて
・地域医療連携室から:地域医療連携室・増田医師
・診療科紹介    :各診療科医長
・意見公開

宇都宮市医療・介護連携支援ステーションご紹介

ステーション 電話 ブロック担当区域
地域包括支援センターの圏域
NHO宇都宮病院地域医療連携室内(宇都宮市下岡本町2160) 028-673-2374 直通 北:富屋・篠井、上河内、 田原、かわち、奈坪、豊郷
東:きよはら、鬼怒、石井・陽東、峰・泉が丘
NHO栃木医療センター地域医療連携室内(宇都宮市中戸祭1-10-37) 028-622-5241 代表 西:城山、砥上、姿川南部、細谷・宝木、くにもと
JCHOうつのみや病院地域医療連携室内(宇都宮市南高砂11-17) 028-655-1161 直通 南:緑が丘・陽光、よこかわ雀宮・五代若松原、雀宮、瑞穂野
済生会宇都宮病院地域連携課内(宇都宮市竹林町911-1) 028-626-5500 代表 中央:きよすみ、さくら西 今泉・陽北、御本丸、ようなん

開設時間:月~金(祝日・年末年始除く)午前9時~午後5時

この他、各ステーション間の連携を支援する「宇都宮市医療・介護連携支援センター」を宇都宮市医師会内(028-622-5255代表)に設置しています。

Q&A

Q1どんな相談ができますか?
A1:「訪問診療に対応している医療機関を教えて欲しい」「訪問看護の依頼先について相談したい」など医療・介護従事者からの医療・介護に関する相談に対して、関連する様々な情報提供や連携支援を行います。

Q2市民も相談できますか?
A2:原則として、医療・介護連携支援ステーションは、医療・介護従事者の連携支援を目的としているため、市民からの相談はお受けすることはできません。市民からの相談は、従来通り地域包括支援センターなどで対応します。
ステーションと地域包括支援センター・ケアマネジャーなどが連携することで、医療と介護の一体的なサービス提供につなげていきます。

Q3相談はどのような方法で行えばいいですか?
A4:医療ソーシャルワーカーや看護師など、専門のスタッフが常駐しています。ご相談の際は、電話のほか、直接窓口にお越しいただいても結構です。
(窓口にお越しの際は、事前にご連絡ください) なお、相談料はかかりませんので、お気軽にお越しください。

Q4「顔の見える関係づくり」に向けた研修の参加したいのですが、開催情報はどこから入手することができますか?
A4:医療・介護従事者向けの研修開催情報は、「宇都宮市地域包括資源検索サイト」に随時掲載していきますので、ぜひご覧ください。(なお、医療・介護従事者向け研修会の情報などをご覧いただくには、施設情報を登録の上、専用IDとパスワードによるログインが必要です)
「宇都宮市地域包括資源検索サイト」 ⇒ https://www.u-carenet.jp/

○問い合わせ先

⇒宇都宮市 保健福祉部 高齢福祉課 地域包括ケア推進室
〒320-8540 栃木県宇都宮市旭1丁目1番5号
Tel:028-632-5328 Fax:028-632-3040

○ついでNHO宇都宮病院

◇診療科紹介

  • 総合内科:月・水・木・金(午前)
  • 糖尿病・内分泌内科医:月(午前・午後)・火・水(午前)・木(午前・午後)・金(午前)
  • 神経系内科:月(午前・午後)
  • 神経難病外来:水(午後)予約制
  • 消化器内科:月・火(午前・午後)、水(午前)、木・金(午前・午後)
  • 呼吸器内科:月~金(午前・午後)
  • 禁煙外来:木・金(午後)予約制
  • アレルギー外来:火(午後)予約制
  • リウマチ膠原病内科:水
  • 小児科:火(午前・午後)、水(午前)、第2,4木(午後)、第4以外金(午前・午後)予約制
  • 外科:月~金(午前・午後)
  • 整形外科:月~金(午前・午後)
  • リウマチ科:水
  • リハビリテーション科:水~金
  • 装具外来:月・金
  • 側弯症外来:木(午前)
  • 障がい者歯科:金

☆「神経難病外来」開設

対象となる主な疾患「パーキンソン病」「多発性硬化症」「筋萎縮性側索硬化症ALS」「脊髄小脳変性症」「重症筋無力症」「進行性核上性麻痺」など
「難病」とは(1)発病の原因が不明、(2)治療方法が確定していない、(3)希少な疾患、(4)長期療養が必要、という4つの要素を全て満たす疾患と定義。
神経難病は脳神経系の難病であり、運動機能やコミュニケーション機能などが進行性に障害され医療依存度や看護や介護の負担が大きくなるため、医師や看護師だけでなくリハビリテーション、、医療ソーシャルワーカーなど他職種協働によるチーム医療を必要とします。
NHO宇都宮病院は栃木県難病医療ネットワークの「難病医療協力病院」に指定されています。

★神経難病外来の役割として

・診断目的・外来での継続加療・レスパイト入院の相談
・当院神経難病病棟への長期入院相談があります

☆「アレルギー外来(成人)」開設

対象となる症状・疾患「長引く咳」「治らない喘息」「重症のスギ花粉」「各種のアレルギー疾患」「(食物、ハチ、薬物、ラテックスなど)」
「原因不明のアナフィラキシー」など
令和元年2月に栃木県から「アレルギー疾患医療中核病院」に選定を受け、アレルギー外来を開設。医師・看護師・薬剤師などによるチーム医療体制の下で重症喘息に対する抗体製剤治療やスギ抗原/ダニ抗原に対する舌下免疫療法(根本治療)など、最新のアレルギー治療が本格的に可能となります。(予約制)

 

NHO宇都宮病院の現状と構想「再検証対象医療機関」の実際

沼尾利郎     宇医会報(令和元年11月1日発行より)

1.はじめに

 厚生労働省はこの度「再編統合の対象となりえる公立・公的医療機関(再検証対象医療機関)」を公表し、私が勤務する国立病院機構(NHO)宇都宮病院はその一つに挙げられました。このため、一部の医師会員や地域の皆様には「宇都宮病院は患者が少なくて経営不振なのか?」「宇都宮病院は効率の悪い経営をしているのか?」などと思われたかもしれませんが、事実は異なります。
本稿では病床再編(機能転換)とダウンサイジング(100床減/15年間)などを解説し、当院の状況や今後の対応(将来構想)について解説させて頂きます。

2.診療機能に合わない指標(ものさし)

 当院は急性期(がん、2時救急など130床)、回復期(地域包括ケア病棟60床)、慢性期医療(重症心身障害、神経難病、結核など180床)の3領域をカバーするケアミックス病院です。つまりマルチタスク(多機能)病院なのですが、今回の分析は主に急性期総合病院の指標(がん、心疾患、脳卒中、救急など)だけに基づくものであり、当院の慢性期医療や回復期医療の診療実績は全く評価されていません。
当院においての急性期医療は病院全体の診療の一部に過ぎないため、その実績が(急性期だけの病院に比べて)少ないのはある意味当然なのです。地域の実情を十分に踏まえた医療を提供しているマルチタスクの病院がシングルタスクの指標だけで評価されたことは当院にとって誠に不本意であり、大変困惑しています。

3.地域から求められる医療

 宇都宮医療圏において重症心身傷害病棟(100床)と地域包括ケア病棟(60床)はどちらも当院のみ(オンリーワン)であり、いずれも90%以上の高い病床稼働率を維持して地域の医療ニーズにこたえた診療を実践しています。一方、足利赤十字病院が2018年度末に結核病床を廃止したことを受け(結核収容モデル事業は実施)、当院は(事実上)県内唯一の結核患者入院施設となりました(こちらもオンリーワン)。
地域医療構想においては、公立・公的医療機関の役割が「民間病院では担うことのできないものに重点化されているか」が問われていますが、当院は上記のような公益性の高いセーフティーネット系医療を担ってきた経緯があり、今後も責任をもって継続する覚悟です(不採算だからやめるという発想はありません)。
なお、当院の急性期(救急)医療は総合病院のような(高次)救命救急とは異なり、2次救急や高齢者の在宅支援救急あるいは結核(疑い)や在宅障害者のための専門特化救急がメインです。

4.病床再編とダウンサイジング

 当院は2004年に国立療養所からNHOに組織改編しており、数々の病院改革を経てその診療体制や診療内容を大きく変化させてきました。まず職員の意識改革を勧めて仕事の透明性・公正性・競争性を徹底させ、2次救急・がん・難病などの専門性を高めて県の施設認定を受け、地域医療支援病院の承認を得て「地域に貢献し地域に必要な病院」であることを実践しています。
また、経営改善後は高度医療機器の購入や人員を増加させて医療の質を向上させ、逆紹介を増やしたりして外来のスリム化と効率の良い働き方を図りました(2018年度の逆紹介率は105%)。
一方、医療ニーズの変化に対応して段階的に病床再編を行い(回復期と慢性期の増床、結核の減床)、病院全体の病床数は独法後の15年間で480→380まで減らしました。院内の様々な改革と多方面かつ双方向性の地域連携を進めた結果、2008年度からは11年連続黒字決算(2018年度の経常収支率は関東信越にある32機構病院中トップ)という成績を得ています。
なお当院は現在「病棟等建て替え整備計画」が進行中であり、2022年度の完成に合わせてさらなる病床再編(急性期の削減と回復期の増床)を予定しています。

5.おわりに

 社会の急速な変化に対応して医療者の意識や医療機関の機能も変わる必要があり、地域包括ケアシステムの構築を実現するためには「自院ができることをする」というサービス志向型アプローチから、「地域から求められること(地域に必要なこと)をする」というニーズ志向型アプローチへと展開することが大切です。ビジネスの世界でいえば「プロダクトアウト」(作り手が作りたいものを作って売る)ではなく、「マーケットイン」(現場のニーズや課題解決を重視して物やサービスを作る)と言う発想こそ重要と言えます。
これはつまり、「(自分が)やりたい医療」から「(地域や社会が)やって欲しい医療」に変わるべし、ということですね。
根拠に基づく「医療の賢い選択」と無駄を減らした生産性の高い「筋肉質な医療(病院経営)」を目指して努力いたしますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

去年11月に話を聞いてから10か月以上の月日を過ごしてから研修を振り返り(まとめる気力が低下していました。面目ない)、この10か月に様々なことがありました。
中国を発症とする新型コロナウイルス。まさにコロナ渦での社会活動、経済活動。自粛を経て「今すべきこと、できること」を皆が模索しています。
NHOの沼尾先生がおっしゃるように、社会や地域が求めているニーズにポイントを合わせて動いていくことが必要です。

研修参加記録

カイポケフェスタ2019(東京)

令和1年11月3日

介護保険法改正に向けた最新情報!

2021年度改正に向けて~どう変わる?今把握すべき重要ポイントとは~
東洋大学ライフデザイン学部:高野龍昭 准教授

はじめに、この研修に参加した2019年11月には新型コロナウイルスは流行していません。政府の打ち出した政策も、政策をまとめた高野先生の研修も新型コロナウイルス前です。それを踏まえてまとめを読み、今後の政策がこのまま進んでいいのか皆さんで考えていただけると幸いです。

研修を受けた時には今後の動きを少しでも早くキャッチしたくて東京秋葉原に話を聞きに行ってきました!

まずは

1:近年の介護保険制度の概観・課題

※高野先生の資料を基に作成

要介護度別に見た介護が必要となった主な原因

※高野先生の資料を基に作成

認知症の人の将来推計

※高野先生の資料を基に作成

日本老年医学会「フレイル」(出典:長寿医療研究センター)

「フレイル」の多面性(飯島勝矢)
(2020年4月現在NHKにおいて「医師が伝えたいこと」でも度々紹介されていますね。)

「フレイル」10月26日の研修でもまとめてましたね。
筋力増強のためには栄養が重要です!

さて
健康寿命=日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間(WHO,2000)
(かつては医療費が節約されると言われていました)
予防で健康寿命が延びるのは望ましいのですが、一方で予防は医療や介護が必要になる先送りさせることにとどまり、長期的には費用を増加させるものと考えられ費用抑制効果は懐疑的との見方もあります。
(例)特定検診・特定保健指導の医療費抑制効果=約200億円/年
  特定検診・特定保健指導にかかる費用=約230億円/年
(例)の金額を比べてみると、30億円赤字ですね。
予防で医療や介護の費用が効率化できるというのは現段階では期待にすぎません。

それでは、介護保険の総費用額と保険料の推移をグラフで見てみましょう。

第1号保険料基準額
第1期 → 第2期 → 第3期 → 第4期 → 第5期 → 第6期 → 第7期 → 2025年推計
2,911円 3,293円 4,090円 4,160円 4,972円 5,514円 5,869円 7,200円

※高野先生の資料を基に作成

2018年を見てください。遂に11兆円を超えました!
介護保険は全部が税金ではありません。ご存じですよね?
ザックリいうと半分は被保険者が支払った介護保険料。
あとの半分の50%が公費負担。
半分税金が財源と言っても、その額5兆円!!
これは、防衛関係の5兆円や、公共事業(道路など)4兆円と比べてみても成程大きな額です。

そんなこんなで介護業界は何にそんなにお金を使っているのと言われ改正の度に苦汁を飲まされます。

総費用等における提供サービスの内訳

※高野先生の資料を基に作成

サービスの内訳をみると施設(特養+老健+介護療養)34%と割合は大きいのですが、手が付けにくいらしいです。
そして、居宅(訪問介護~特定施設まで)44%のうちの中で断トツの通所介護12.7%が1番手を付けやすく訪問介護9.3%は2番目に手を付けやすい・・

要介護(要支援)認定者数・介護給付費総額・高齢者人口・後期高齢者人口・国民医療費(75歳以上分)・名目GDPの伸び~2000年度を100とした時の指数~

※高野先生の資料を基に作成

グラフ見ても分かるように「介護給付費総額」の急上昇!
人口の上昇よりも急ですよね
だから「介護保険には無駄が多い」と考えられてしまいます。
次に「社会保障給付費の見通し」です。(カッコ内指数は2018年度比)

※高野先生の資料を基に作成

介護の費用をGDP比でみると    社会保障費用合計をGDP比でみると
2018年度=1.89%         2018年度=21.5%
2025年度=2.37%(1.3倍)      2025年度=21.7%(1.01倍)
2040年度=3.26%(1.7倍)      2040年度=24%(1.12倍)

ここで言えることは「お金は何とかなるが人材確保が足りない」ということ。
でも、ここまで振り返ってみて、腑に落ちないことだらけですよね。

「介護保険には無駄が多い」と考えられて予算をカットされる

お給料が低い設定。もしくはカット。

大変な仕事なのに、低賃金では選ばれる仕事にならない。

介護職が選ばれない。

人材不足・・・

もう魔のスパイラルまっしぐら!!
良いんです、外国人労働者に働いてもらうことは。
日本の人口は減少しているんですから。

Only日本人だけでは、今後日本は成り立ちません。
だからと言って日本人が選ばない仕事を外国人に押し付けている感、半端ないですよね。

日本人が「大変だけど素晴らしい」と思える選ばれる仕事。そのうえで足りない人材を外国人に助けてもらう。
話がかなり脱線しました。

※ちなみにセミナーを受けたのは2019年11月ですが、これをまとめている2020年4月の今、新型コロナウィルスが世界的に大流行。
日本はコロナウィルスが蔓延している国々からの入国をストップ。
もちろん外国人実習生、労働者も入国できず。もしくは帰国という大変な状況に陥っています。
医療物資も輸入に頼っていたので不足状態。結果論ですがなんでも外国頼みは良くありませんね。

2025年問題ありますよね。25年以降も増えるんです。
(2015年の実数を0とした時のその後の伸び率)

※高野先生の資料を基に作成

(2015年の実数を0とした時のその後の伸び率)

※高野先生の資料を基に作成

(2015年の実数を0とした時のその後の伸び率)

※高野先生の資料を基に作成

要介護者等の推計1:2018~2025

※高野先生の資料を基に作成

※全国的には要介護高齢者数は2040年代まで増加。
一方、その伸びの地域差は今後一層拡大。

要介護者等の推計2:2018~2025

※高野先生の資料を基に作成

推移、推計ありますが、地域によって千差万別です。
ご自分の地域に今後何が起こるのかをそれぞれ考えることが重要なようです。
要介護者等の推計は首都圏が著しい結果になっています。

(2015年の実数を0とした時のその後の伸び率)

※高野先生の資料を基に作成

このグラフも、とっても怖い
2015年を全ての基準として(総人口や生産年齢人口、後期高齢者人口などなど)
2030年まで後期高齢者人口は増え続け、140%に。逆に総人口含め他の人口は下がり続ける。

だから「骨太方針2015における社会保障改革」では

  • 社会保障は歳出改革の重点分野
  • 社会保障給付の増加を抑制することは個人や企業の保険料等の負担の増加を抑制することにほかならず、国民負担の増加の抑制は消費や投資の活性化を通じて経済成長にも寄与(なんのこっちゃ・・)
  • 消費増税以外の国民負担増(社会保険料含む)は極力抑制
  • 国民皆保険制度は維持

「地域医療構想の推進」
団塊の世代が後期高齢者になり始める2022年~すべて後期高齢者になる2025年に向けて、地域医療構想に沿って、高度急性期・急性期から回復期や在宅医療等に大幅な医療機能の転換を進めていく必要。
今後、個別の病院名や転換する病床数等の具体転換方針の速やかな策定に向けて、各地域において2年間程度で集中的な検討を促進することとされている。

(数字は全て病床数:万床)
※高野先生の資料を基に作成

ケアサイクル論

なるものがあります(長谷川俊彦先生による高野先生の加筆修正)

もう少しデータをグラフで確認してみましょう。

2015年までは実績。2020年から推計です。 ※高野先生の資料を基に作成

※1995年までは「老人ホームでの死亡」は「自宅、その他」に含まれます。数字は全て%

※高野先生の資料を基に作成

ここまでのデータをもとに「骨太の方針2016における社会保障改革」

  • 世界に冠たる国民皆保険・皆年金を維持
  • 「経済・財政再生計画」に揚げられた医療・介護提供体制の適正化
    インセンティブ改革、公的サービスの産業化、負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化
    薬価・調剤等の診療報酬及び医薬品等に係る改革、年金、生活保護等に係る44の改革項目について改革工程表に沿って着実に改革を実行。
  • (潜在需要の顕在化の方策として)介護分野において個々の状態やニーズに応じた多様なサービス提供を実現する観点から、介護保険外サービスの活用を含め、多様な生活支援サービスの利用を推進。

*2015を踏襲しつつ「工程表」を順守する方針
*介護保険外および生活支援サービスの強調へ

そして今後の介護の方向性を表しているのが
「科学的介護に基づく介護に係る検討会」
開催趣旨:科学的な自立支援等の効果が裏付けられた介護サービスの方法論の確立、普及に必要な検討を実施
事務局:医務技監の下、老健局、医政局、保険局
座長:鳥羽研二(国立長寿医療研究センター理事長)
第1回:H29/10/12
第2回:H29/10/26①
第3回:H29/11月②~④
第4回:H29/12月⑤
第5回:H30/3月・中間とりまとめ

・今後のエビデンスの蓄積に向けて収集すべき情報の整理について

  1. 栄養
  2. リハビリテーション
  3. 主として介護支援専門員によるアセスメント:ケアプラン作成時のアセスメントの結果についてどのように情報収集するか等を議論
  4. ケアプラン:ケアプランを一つの介入と捉えた時、その効果に関する研究を行う上で必要な情報や行いうる研究の形等について議論
  5. 認知症

介護領域におけるエビデンスの蓄積、活用に必要なその他の事項について
介護領域のデータベースの内容
「社会保険総合データベース」

  • 要介護認定情報、介護保険レセプト情報が格納
  • 要介護認定及び請求・支払いの際に保険者が収集。H30年度よりデータ提供義務化予定
    「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業のデータ」
  • 通所リハビリテーション事業所、訪問リハビリテーション事業所からのリハビリテーション計画書等の情報を収集
  • 通称VISIT(monitoring & eValuation for rehabilitation ServIces for long-Term care)
    「上記を補完する介入、状態等のデータ」
  • 新たに構築。収集内容は主に本検討会で議論
  • 通称CHASE(Care HeAlth Status & Events)
  • 収集経路は今後、収集内容を踏まえて検討
  • 2020年度からの本格運用を目指す

「CHASEの初期仕様において収集の対象とする項目(抜粋)」
1基本的な事項(できるだけ多くの事業所等において入力されるべき項目)

  • 総論=既往歴、服薬情報、同居人等の数と本人との関係性、Barthel Index
  • 認知症=DBD13・Vitality Index
  • 口腔=食事の形態、誤嚥性肺炎の既往歴等
  • 栄養=身長、体重、提供栄養量、摂取量、血清アルブミン値、嚥下状況、多職種による栄養ケアの課題

2目的に応じた項目(報酬上の加算の対象となる事業所等において入力されるべき項目)

  • 総論=ADLやIADLに関する個別機能訓練等に関する項目
  • 口腔=摂食嚥下機能検査の実施や口腔ケアの方法、改定水飲みテストの結果などに関し、取得している加算の様式例等に含まれるもの

3その他の項目
総論=評価方法(包括的自立支援プログラム、居宅サービス計画ガイドライン、インターライ方式、R4)、FIM、興味のあるアクティビティ、「興味、関心チェックシート」の関連事項、ADLやIADL、認知機能、BPSD、痛みなどに関する項目(データ項目ver2.1)

  • 認知症=HDS-R、Zarit介護負担尺度、CGA7
  • 口腔=食事時のポジショニング
  • 栄養=必要栄養量(エネルギー、たんぱく質)
    低栄養のリスクレベル、体重減少の有無などに関し、取得している加算の様式例等に含まれるもの、握力、水分摂取量(モデル事業においてフィージビリティなどを検討)

細々書かれていますが、感覚だけの介護の計画は終わりの時代。
語弊がありますが誰でも同程度の計画を作成できる。(もちろん資格や経験は必須です)
そうなるためには、個々の中に蓄積されてきた経験値を個々の物だけにしないで
今流行りのビッグデータに一旦落とし込んでさらなる情報をかき集め、最終的に計画作成の道筋として共有される。計画でも介護でも同じです。
最後は人の温かさなどの加味も必要とは思われますが、誰が計画しても介護しても方法に大きな違いが生まれないのは良いことだと個人的に思いました。

以降、セミナー内容続きます。

2018年度の介護保険制度改正はひとつのターニングポイント

インセンティブ元年?
・保険者機能に応じたインセンティブ(2018年度施行)

・事業所の機能(サービスの質)に応じたインセンティブ(本格実施は次期)

・高齢者自身へのインセンティブ(?)

2018年介護報酬改定

  • 厳しい財政サイドからの締め付け
  • 厚労サイドは、診療報酬改定で「薬価引き下げ」財源確保し何とかプラス改定へ
  • 焦点であった「自立支援、重度化防止」「効率化」「適正化」は実質的な先送り
  • 財政的な見通しは依然として不透明

↓2021年改定がより厳しいものに?
これらのことを踏まえて下記からは

2:2021年度制度改正の動向

2021年度改正へ先送りされた課題

  • 軽度者(要介護2)までの給付のあり方
    ※訪問介護の生活援助・福祉用具・住宅改修の給付外し
    ※通所介護の総合事業移行
  • 財政的インセンティブの本格化
    ※保険者による自立支援・重度化防止対策
    ※事業者・施設の「サービスの質」に応じた報酬付け
    ※本人へのポイント付加
  • 医療・介護連携
    ※医療保険から介護保険への「付け替え」促進
  • 「混合介護」の普及・促進
  • 共生型サービスの拡大
    ※居住系やケアマネジメント
    ※障害福祉サービスとの統合の議論
  • 2割負担対象の拡大
    ※「資産の勘案」も含めた見直し
  • 生産性向上・業務効率化
    ※介護ロボットの本格導入
    ※ICT化の促進
  • 補足給付の見直し
  • ケアマネジメントの自己負担導入
  • 現金給付(家族支援)の導入
  • 人材確保対策
  • 被保険者範囲の見直し  etc・・・

「骨太の方針2018」概要

  • 基礎的財政収支(PB)の黒字化は2025年度を目指す
  • 社会保障費用の抑制の目安は高齢化による増加分に相当する伸びに収め「工程表」の遵守を
  • 「全世代型社会保障の構築」に向け、少子高齢化対策や社会保障に対する安定財源を確保するとともに、現役世代の不安等に対応し、個人消費の拡大を通じて経済活性化につなげるためには2019年10月に予定されている消費税率の引き上げを実現する必要がある
  • 「人づくり改革」介護離職ゼロに向けた介護人材確保のため、介護職員のさらなる処遇改善を進める
  • 「生産性革命」「新たな外国人材の受け入れ」
  • 「ケアマネジメントの質の向上と利用者負担の導入」「介護施設・事業所の大規模化」「介護保険の利用者負担増」

つづいて
「骨太方針2019」抜粋1

  • 今後の財政運営:2020年ごろの名目GDP600兆円経済と2025年度の財政健全化目標(債務残高GDP比の安定的な引き下げ)の達成を目指す
  • 3つの視点
    ①潜在成長率の引き上げによる成長力の強化
    ②成長と分配の好循環の拡大
    ③誰もが活躍でき、安心して暮らせる社会づくり、人づくり革命・全世代型社会保障

「骨太方針2019」抜粋2

  • 全世代型社会保障
    ①70歳までの就業機会確保
    ②中途採用・経験者採用の促進
    ③疾病・介護の予防
     (1)疾病予防促進について
      ・保険者努力支援制度(国民健康保険)
      ・後期恋礼者支援金加減算制度(健保組合)
     (2)介護予防促進について
      ・介護インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)
     (3)エビデンスに基づく政策の促進

「骨太方針2019」抜粋3

  • 共生社会づくり
    ◇高齢者・障碍者虐待の早期発見、未然防止やセルフネグレクトの実態把握等の観点から、関係機関の専門性の向上や連携の強化、体制の整備を図る。生活困窮者への包括的な支援体制の整備を推進する。
    ◇「認知症施策推進大網」に基づき、認知症と共生する社会づくりを進める。また成年後見制度の利用を促進するため同大網も踏まえ、中核機関の整備や意思決定支援研修の全国的な実施などの施策を総合的・計画的に推進する。
    ◇性的指向、性自認に関する正しい理解を促進するとともに社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める。デジタル格差の無いインクルーシブ(包摂的)な社会を実現するため高齢者、障碍者等に対するICT利活用支援に取り組む。

「骨太方針2019」抜粋4-1
<社会保障(基本的考え方)>

 年金及び介護については必要な法改正も視野に2019年末までに結論を得る。医療等のその他の分野についても、基盤強化期間内から改革を順次実行に移せるよう、2020年度の「骨太方針2020」において給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめる。
 人生100年時代を迎え、少子高齢社会の中で生き方、働き方の多様化に対応できる持続可能な社会保障制度へと改革していく必要がある。議論を進めるにあたっては、いわゆる「支える側」と「支えられる側」のリバランスと言う観点や個人の自由である多様な選択を支え、特定の生き方や働き方が不利にならない「選択を支える社会保障」と言う考え方も含め年齢的にとらわれない視点から検討を進めるとともに、自助・共助・公助の役割分担の在り方、負担能力や世代間・世代内のバランスを考慮した給付と負担の在り方等の観点を踏まえて行う。

「骨太方針2019」抜粋5-2
(予防・重症化予防・健康づくりの推進)

  1. 健康寿命延伸プランの推進
    健康寿命延伸プランを推進し、2040年までに健康寿命を男女ともに3年以上延伸し75歳以上とする事を目指す。
  2. 生活習慣病・慢性腎臓病・認知症・介護予防への重点的取り組み「認知症施策推進大網」に基づき、「共生」を基盤として予防に関するエビデンスの収集・評価・普及、研究開発などを進めるとともに、早期発見・早期対応のため、循環型ネットワークにおける認知症疾患医療センターと地域包括支援センター等との連携を一層推進するなど、施策を確実に実行する。
     高齢者一人一人に対し、フレイルなどの心身の多様な課題に対応したきめ細やかな保健事業を行うため、運動、口腔、栄養、社会参加などの観点から市町村における保健事業と介護予防の一体的な実施を推進する。高齢者の通いの場の活用など、介護予防の取り組みのさらなる推進に向け、介護保険制度の保険者機能強化推進交付金の抜本的強化を図る。

「骨太方針2019」抜粋5-3
(医療・介護制度改革)

 持続可能な社会保障制度の実現に向け、医療・介護サービスの生産性向上を図るため、医療・福祉サービス改革プランを推進するとともに、地域包括ケアシステムの構築と併せ、医療・介護提供体制の効率化を推進し、勤労世代の負担状況にも配慮しつつ、後期高齢者簿増加に伴う医療費の伸びの適正化や一人当たり医療費の地域差半減、介護費の地域差縮減を目指す。
 診療報酬や介護報酬においては、高齢化・人口減少や医療の高度化を踏まえ、下記の各項目が推進されるよう適切に改善を図るとともに、適正化・効率化を推進しつつ、安定的に質の高いサービスが提供されるよう、ADLの改善などアウトカムに基づく支払いの導入等を引き続き進めていく。

「骨太方針2019」抜粋5-4
<保険者機能の強化>

 介護の保険者機能強化推進交付金についても、アウトカム指標の割合の計画的引上げ等とともに、介護予防などの取り組みを重点的に評価するなど配分基準のメリハリの強化やさらなる見える化を通じて、保険者へのインセンティブを強化する。
 また、第8介護保険事業計画期間における調整交付金の活用方策について、地方自治体関係者の意見も踏まえつつ、関係審議会等において検討し、所要の措置を講ずる。
 住所地特例制度の適用実態を把握するとともに、高齢者の移住促進の観点も踏まえ、必要な措置を検討する。

「骨太方針2019」抜粋5-5
(給付と負担の見直しに向けいて)

社会保障の給付と負担の在り方の検討にあたっては、社会保障分野における上記の「基本的な考え方」を踏まえつつ、骨太方針2018及び改革工程表の内容に沿って、総合的な検討を進め、骨太方針2020において、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめる。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋1)財政制度審議会(2019/6)

 社会保障の伸びの抑制については「新経済・財政再生計画」で定められた社会保障関係費の実質的な増加を高齢化と言う人口動態による増加分に相当する伸びに収めるという方針を、引き続き着実に達成していく必要がある。そのためには昨年末に取りまとめられた「新経済・財政計画会改革工程表2018」に掲げられている改革項目について、各項目の進捗状況につき、一定の期限を区切って検証を行うとともに、遅れが生じた項目については速やかに改善策を講じるなど、厳格な管理を実施すべきである。
 また2020年度に取りまとめられる予定の「経済財政運営と改革の基本方針」においては、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策をとりまとめ、加えて「基盤強化期間」内から実行に移していくこととされている。これは社会保障関係費の伸びを抑制し、ひいては2025年度のプライマリーバランス黒字化を達成するうえでも重要な取り組みであり、改革の内容・実施時期を明確にしたうえで進めていくことが不可欠である。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋2)財政制度審議会(2019/6)

 介護保険制度については、これまで保険給付の範囲の見直し、介護給付の適正化・効率化、利用者負担の引き上げ等の改革に取り組んできたものの、高齢化の進展等により、介護保険制度の導入時から総費用や保険料負担の増加に歯止めがかかってない。
 このため、次期介護保険制度改革においては、今後の高齢者の増加、現役世代(支え手)の減少を見据え、制度の持続可能性を確保し、さらなる上昇が見込まれる保険料負担の増加を抑制する観点から、改革に着実に取り組む必要がある。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋3)財政制度審議会(2019/6)

<保険給付範囲の在り方の見直し>

  1. 軽度者へのサービスの見直しの状況
    軽度者へのサービスについては平成27年度から平成30年度末にかけて訪問・通所介護サービスの要支援者に対する介護予防給付を、国による一律の基準によるサービス提供ではなく、各地方公共団体の創意工夫で、多様な主体による地域の実情に応じたサービスの提供を可能とする「地域支援事業」に移行してきた。現在、利用者のサービス利用日数を維持しつつ、次第に従前より人員配置などの基準を緩和したサービスの提供が拡大・給付しつつあり、この以降により、サービスの質を確保しつつ介護給付費の伸びが一定程度抑制されることが期待されている。
     要介護1・2の軽度者への介護給付については、要支援者向けサービスでは、要支援者向けサービスでは地域支援事業に移行した通所介護や訪問介護が全体の3割超を占め、特に訪問介護では、掃除や洗濯等の生活援助サービスの占める割合が約半分を占める状況にあり、さらに給付の重点化・効率化を進めつつ、質の高いサービスを提供していくことが可能である。
  2. これまでに取り組んできた主な事項
    こうした地域支援事業への移行の他、平成27年度より特別養護老人ホームへの入所者を原則要介護3以上の高齢者に限定することや、平成30年10月より福祉用具の貸与価格の上限を設定すること等の見直しに取り組んできた。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋4)財政制度審議会(2019/6)

  • 主な改革の方向性
    長期にわたり介護保険給付の増加が見込まれることを踏まえれば、要介護度・要支援度の軽重に関わらず同じ保険給付率となっている制度を改め、小さなリスクについては、より自助で対応することとすべきである。加えて、サービスの質を確保しつつ、地域の実情に応じた多様な主体による提供を推進する観点から、要支援者向けサービスの地域支援事業への定着・多様化にも引き続き取り組む。
     また、軽度者のうち、残された要介護1・2の生活援助サービス等についても、第8期計画期間(令和3年度~令和5年度)中のさらなる地域支援事業への移行や、生活援助サービスを対象とした支給限度額の設定または、利用者負担の引き上げ等について、具体的に検討していく必要がある。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋5)財政制度審議会(2019/6)

<保険給付の効率的な提供>

  1. 介護費の地域差の状況等
    要介護認定率や一人当たり介護給付費については、性別・年齢階級・地域区分を調整してもなお大きな地域差が存在している。認定率については、高位20保険者と比較すると2.4倍、一人当たりの給付月額についても同様に比較すると2.2倍の開きがある。
  2. これまでに取り組んできた主な事項
     インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)を、平成30年度から創設し、以来、毎年度200億円の国費を投じて、保険者による自立支援や重度化防止等に向けた取り組みを推進するための財政インセンティブを付与している。
     しかしながら、インセンティブ交付金交付する際の基準となる指標についてH30年度の評価結果実績を見ると、ひとりあたり給付月額が平均よりも高い5団体と低い5団体で比較すると、一人あたり給付月額が高い保険者の地域の方が獲得したポイントが高くなっているなど、現時点では、介護給付費の地域差縮減に向けたPDCAサイクルが必ずしも確立されていないようにうかがえる。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋6)財政制度審議会(2019/6)

<主な改革の方向性>

介護の地域差縮減に向けては、介護費適性の観点から、インセンティブ交付金への適正なアウトカム指標の設定・活用や配点のメリハリ付けを行うことで、保険者機能のより一層の強化を進めるべきである。また、調整交付金については、保険者機能のより一層の底上げを図るため、今年度中に結論を得て、第8紀からインセンティブとしての活用を図るべきである。
 さらに、2号被保険者の保険料財源の配分についても、保険者機能の発揮を促す仕組みとし、給付と負担の牽制効果を高める観点から、介護予防・重症化防止の取り組み状況等を評価したうえでメリハリ付けし、保険者に傾斜配分する仕組みを検討すべきである。
 このほか、保険給付の効率的な提供に向けては、地域医療構想を踏まえた介護療養病床等の介護医療院等への6年間の経過措置期間内での着実な転換、在宅サービスの保険者等の関与の見直し、介護事業所の経営効率化の推進と言った提供体制の改革に向けた取り組みに加えて、介護報酬改定に係るPDCAサイクルの確立、介護サービスにおける民間企業の参入とサービス価格の透明性向上・競争推進など、公定価格の適正化に向けて取り組む必要がある。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋7)財政制度審議会(2019/6)

<高齢化・人口減少下での負担の公平性>

  1. 介護保険費用の構造
    介護保険費用については令和元年度予算において年間11.7兆円、年率4.7%で伸びているが、その財源は公費負担5.9兆円(50.4%)、1号保険料(65歳以上)2.4兆円(20.5%)、2号保険料(40~64歳)2.5兆円(21.5%)により大宗がまかなわれ、残りを利用者負担0.9兆円(7.6%)により賄う構造となっている。また65歳以上の者の要介護認定率は2割弱であり、介護サービスを実際に利用している者と保険料のみを負担している者が存在している。利用者負担の詳細を見ると、受給者全体658万人の約9割が1割負担となっている。
  2. これまでに取り組んできた主な事項
    介護の利用者負担については、平成27年8月から年金収入等が280万円以上の利用者に2割負担を導入し、平成30年8月から年金収入等340万円以上の利用者に3割負担を導入した。このほか、平成27年8月からは、介護施設等に入居する低所得者向けの補足給付の資格要件に預貯金等の試算要件を追加し、平成29年8月からは、介護納付金(2号保険料)について、加入者割から報酬額に比例した負担(総報酬割り)に段階的に移行するなど、能力に応じた負担となるよう、取り組みを進めてきた。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋8)財政制度審議会(2019/6)

<主な改革の方向性>

 介護保険制度については、制度の持続可能性や給付と負担のバランスを確保する観点から、所得・資産などに応じた負担となるよう推進していく必要がある。このため、利用者負担を原則2割とする事や利用者負担2割に向けその対象範囲を拡大するなど、段階的に引上げを実施すべきである。
 また、補足給付については、在宅サービス受給者と施設サービス受給者との負担の権衡や世代間の公平性を確保するため、実態調査等を通じ、住宅等の資産の追加、預貯金等に係る基準の見直しも検討すべきである。
 このほか、ケアマネジメントについても、世代間の公平性の観点等も踏まえ、利用者負担を設けるとともに、評価手法の確立や報酬への反映を通じて、質の高いケアマネジメントを実現する仕組みとすべきである。
 加えて、現在、介護老人保健施設、介護療養病院、介護医療院の多床室については、現在、質量相当分が保険給付の中に含まれたままであり、これを除外する見直しをする必要がある。

いかかでしたか?高野先生はここまで審議会での内容を細かく紹介してくれました。

終わりに

2021年度介護保険制度改正:最大の争点をどうぞ

  • 要介護1,2の一部サービスの保険給付除外(総合事業へ移行)
    通所介護/訪問介護(生活援助)/福祉用具貸与/特定福祉用具販売/住宅改修
  • ケアマネジメントの利用者負担導入
  • 2割負担層・3割負担層の拡大
  • インセンティブの拡大
    ~調整交付金に保険者機能評価を包含
    ~介護報酬による利用者の心身機能維持/改善の評価拡大(CHASE重視)

介護保険制度の今後(考察)

介護保険制度は、医療保険との連動性を高めるため、次の3点に比重を移していく。

  1. 重度者(認知症高齢者含む)の具体的ケア
  2. 看取り
  3. 心身の機能回復のための訓練

財政面からは、利用者の費用負担をより多く求めていくとともに、費用の抑制に向けて「裁量的経費」(総合事業など)の部分を増やす(保険給付の範囲の縮小を行う)ほかなく、それによって給付費用の増大に歯止めをかけようとする。

2035年の介護保険制度

  • 2025-30年までに(政府方針からほぼ明らか…)
  • 利用者負担は医療保険と同一に
  • 要介護2までの福祉系サービスは「総合事業」に
  • 要介護2までの福祉用具、住宅改修、訪問介護の生活援助は保険給付外に
  • 入所施設は医療的ケア、看取り、機能訓練が強調される
    →要介護2までは医療系サービスだけが保険給付?
    →要介護3以上の入所サービスは極めて医療に接近
  • 2030-35年には(あいまいながら・・)
  • 介護保険と医療保険の境界は不明確に(連携の強調)
  • 過疎化により地方の市町村では保険運営困難に

 フェスタを振り返り現在4月下旬。世界中で新型コロナウイルスが大流行して、国内でも医療崩壊が叫ばれ、最近は介護崩壊も騒がれ始めています。
介護現場から人手不足との声を受けて厚生労働省が同法人から人を移動させて対応するように答えてる一幕がありました。でも移動させられるような人材は法人内に余っていません。そもそも移動できる人材がいるような大きな法人でないと対応できない方法ではありませんか?

 その他にも、休業要請を受けないデイサービスでも感染を恐れ自主休業を選ぶ事象所が多数。その結果かどうかは定かではありませんが、認知症が進行したり、筋力が衰えたりする方がいるとメディアで取り上げられています。前述してきたようなサービス抑制を今回のコロナ騒動はギュッと圧縮した形で表しています。必要ないサービスはあるかもしれない。だからと言って一律不必要とカットするのは如何なものでしょう。

このフェスタの講師、高野先生もNHKなどで何度もご意見を聞かれ今後の介護サービスを支える人材についてお話しされていました。今までも何度となく介護保険は制度改正を余儀なくされ大抵報酬は減額されてきました。そんな経緯があり介護保険サービスは慢性的な人材不足。新型コロナウイルス対応で学校も休校。子供たちがお家にいるので仕事を休むことになり更に人手不足。

 安倍首相は医療職に手当てをつけると発言ありましたが、介護はどうなんでしょう?
介護サービス費用を抑制したい気持ちは理解できますが、今回のような感染症が大流行した時に、外国に頼り切っている現在のスタイルでは対応しきれないのではないのでしょうか?まずは自国の中で人手を確保する、加えて魅力的な仕事として選ばれる、そんな対応が必要になっています。

 安倍首相は一旦30万で予算が通った給付金を1人10万円にしました。一度決まっても変更できるんです。介護保険制度改正も何度でも考え直して欲しいです。

研修参加記録

介護運営法人セミナー

令和1年10月28日

介護運営法人セミナー
「家族からのヘビークレームへのや対応策」
~カスタマーハラスメントから職員を守るには~

講師:株式会社安全な介護 山田しげるさん

1.家族からのヘビークレームの実態

(1)利用者家族による「ヘビークレーム」とは何か?

    • 対応が困難な要求を、強硬な手段(カスタマーハラスメント)で主張する
    • 一旦受け入れるとエスカレートし、さらに困難な要求へとつながる
    • 困難な要求への対応によって、業務の障害と職員の健康被害を招く

○要求の内容が

    • 一般常識の限度を超えている要求
    • 実現が困難と分かっている要求
    • 自分だけの特別な利益を要求

○要求の手段がカスタマーハラスメント

    • 暴力的、威圧的な態度と言葉
    • 職員の人格を否定する暴言を吐く
    • 要求を長時間、何度も執拗に繰り返す

○深刻な被害

    • 職員が精神を患って失職する
    • 労働時間増加で職員の健康被害
    • 職員が利用者を虐待

(2)ヘビークレームはどれくらいで起きているか?

ヘビークレームに関する実態調査
(株式会社安全な介護では、2018年11月から2ヶ月かけてヘビークレームの実態について調査いたしました。)

<調査内容>

    1. 家族からヘビークレームを受けたことがあるか?(受けたことがあると答えた施設のうち)
    2. 被害の程度が深刻だった
    3. 被害の程度は軽度だった
    4. 業務の支障があった
    5. 職員の被害があった

<調査結果>

施設種類 対象数 経験ない 経験ある 深刻な影響 軽度の影響 業務に支障 職員の被害
特養 105 85 20 8 12 12 4
老健 35 22 13 3 10 3 2
介護付有料 35 16 19 6 13 5 1
その他 40 31 9 3 6 3 1
合計 215 154 61 20 41 23 8

この表を見て、山田さんは疑問を呈します。
「職員の被害」とは「辞めた」ことを意味しますが、「軽度の影響」と感じている件数の多さに確かに疑問を感じます。

 

(3)なぜ家族のヘビークレームが増えたのか?

→施設入所者家族によるヘビークレーム増加の背景

<社会的な要因>

    • カスタマーハラスメントの増加
      これは消費者による自己中心的で利藤な要求や悪質なクレームなどの迷惑行為をさします。明確な定義は定まっていませんが、商品やサービスの提供側に明らかな過失がないにもかかわらず、執拗に謝罪や対価を要求する、暴言や暴行に及ぶ、威圧的な言動をとるといった行為をさします。増加傾向にあるとされ、威力業務妨害罪や脅迫罪などの違法行為になりうる事例もあることから2018年に厚生労働省が「働き方改革」に一環として対策に着手しています。
    • 感情労働職種の増加
      顧客などの満足を得るために自信の感情をコントロールし、常に模範的で適切な言葉・表情・態度で対応することを求められる労働の事です。「肉体労働」「頭脳労働」に続く第3の労働形態として、米国の社会学者アーリー・ホックシールドが提唱しました。具体的には、旅客期の客室乗務員をはじめとする接客業、医療職、介護職、カウンセラー、オペレーター、教職などがあげられますが、近年はあらゆる職種で感情労働を強いられるケースが増加傾向にあります。感情労働による疲労や心の傷は回復しにくく、メンタルヘルスの不調を引き起こすことも少なくないため、社会問題化しています。
    • UAゼンセン(産業別労働組合)が、外食、タクシー、ホテル、病院、介護などサービス業の労働者を対象に2018年に実施した調査では、組合員3万人の約75%に当たる21,440人が「業務痛に悪してくれ無(迷惑行為)に遭遇したことがある」と回答しています。その割9割以上が「ストレスを感じた」と答えています。中でも医療・介護・福祉(4000件)は2位のフードサービス(1600件)の2倍とダントツ1位です。

<地域的な要因>

    • 大都市圏に多いヘビークレーマー
      前出のアンケート調査によれば、ヘビークレームは大都市圏の施設に集中していることがわかります。大都市は全てのサービス業で過当競争が激化し、一般消費者がわがままになっているという傾向があります。また、大都市圏の施設入所者は病院から直接入所する利用者が多く、家族が在宅介護を経験していない、という特徴があります。在宅で利用者を介護した経験があれば介護の苦労を知っていますし、ショートやデイサービスを利用していれば、介護サービスの限度も自然に認識します。(なんでも頼めると思っているようです)

<施設サービス固有の要因>

    • 施設が理不尽な要求を拒絶できない理由
    1. 管理者の姿勢
      管理者は「施設運営には家族との信頼関係の構築が不可欠(Yesしかない)」と家族との人間関係を重視しすぎる傾向があり、毅然とした態度でNoと言えません。また“福祉は需要が基本”と「まず受け入れてから理解を求めよう」と受け入れてしまいます。(根気よくは無理。一度受け入れたら最後です)
    2. 施設制度の上限が決められていない事(制度的欠陥)(相手は契約書を熟読してきます)
      施設介護は個々のサービス単価が決められていない包括サービスであり、サービスの受け入れ上限が決められていないのです。「母だけ週5回入浴させろ」という要求に対して「入浴は週2回まで」と言う“決まり”が無いので、拒否する明確な理由が無いため受け入れてしまいます。
    3. サービス提供を拒否する場合の“正当な理由”が明確になっていない
      例えば家族のハラスメントによって職員がうつ病になれば、家族による不当な加害行為ですからサービス提供を拒否しなければなりません。しかし、このような現実的な被害が発生しているケースでさえも、管理者「まさか退所させられないし」と、家族に毅然とした対応ができません。(退所決定は契約解除ができることであって本当に追い出すことはできません)

2.ヘビークレームの種類と家族の特徴

(1)ヘビークレームのパターン

<パターン1:利用者のケアに関係ない家族の満足のための要求>

    • 居室の洗面台の水がまずくて飲めない。浄水器を付けろ。
    • 母が心配だから毎日メールで介護記録を送れ。
    • あの認知症の利用者がうるさいからこちらに来させないでくれ。
    • 絶対に効果があるリハビリを自分が考えたから母にやれ。
    • 職員の挨拶が暗く気分が不快になる、元気に挨拶させろ。
    • 一度に使う歯磨き粉の量を正確に守れ。
    • 毎日面会に来るから見ている前でオムツ交換しろ。

<パターン2:施設業務の障害となる特別なケアの要求>

    • 母はきれい好きだから毎日入浴させろ。
    • 2時間おきに体位交換しろ。
    • 夜間は1時間おきに巡回しろ。
    • 面会に来た時はケアの記録を見せて説明しろ。
    • 身体機能の低下を防ぐためにリハビリを毎日やれ。
    • 通院の付き添いは全て施設でやれ。そのために預けているんだ。
    • 話しかけないと認知症が悪化するそうだ。30分おきに話しかけて。

<パターン3:利用者間の公平性に反する要求>

    • 2時間おきに体位交換しろ。
    • 夜間は1時間おきに巡回しろ。
    • 母は体が弱いから居室の拭き掃除は毎日やれ。
    • 毎食後にコーヒーを出せ。
    • この部屋は暗い、個室に移して窓側のベッドにしろ。
    • 家では毎日検温をしていたから施設でも毎日やれ。
    • 糖尿病なので血糖値を計って常時一定になるようにしろ。

<パターン4:要求の目的に合理的な根拠がない要求>

    • 居室の洗面台の水がまずくて飲めない、浄水器を付けろ。
    • 心配だから週に1回メールで介護記録を送れ。
    • 週2回の入浴なんてありえない、もっと増やせ。
    • 職員の挨拶が暗く気分が不快になる、元気に挨拶させろ。
    • 一度に使う歯磨き粉の量を正確に守れ。
    • 毎日面会に来るから見ている前でオムツ交換しろ。

<パターン5:暴力的・威圧的で執拗な要求(カスタマーハラスメント刑法の犯罪です)>

※暴力的・威圧的な要求手段

    • 突然大声をあげて「俺の言うことが聞けないのか!」と怒鳴りつける。
    • 「市長は私の友達だ。市長に言えばお前の首なんかすぐに飛ぶんだぞ!」と恫喝。
    • 「どこ見て聞いてんだ!ぶっ殺すぞ!」と怒鳴りつける。
    • 「お前がバカなんだろ!」と職員の頭を小突く。
    • 「俺を馬鹿にしているのか!」と襟首をつかむ。
    • 「それでも人の親か!」と職員の人格を否定する。

※異常に執拗な要求手段

    • 同じ要求を1時間以上繰り返す。
    • 1日に10回も電話をかけてくる。
    • 毎日面会に来るたびに長時間要求を繰り返す。

◎ヘビークレームをパターン化(類型化)する意味
→パターン別に要求拒否の根拠を明確にしよう

    • 「なぜ毎日入浴できないんだ、毎日風呂に入るのは常識」という主張
      どのように反論すればよいか?反論できないため、受け入れてしまうことが多い。

 

(2)ヘビークレーム家族の性格や属性

クレーマーになりやすい人の性格

    • もともと粗野で暴力的な性格の人
      言葉遣いが乱暴な人は相手のことを考えずに一方的な主張をします。自分が言われたら気分を害することを平気で人に言える人。周囲の人が遠慮するので横暴になります。
    • まじめで神経質で完全主義の人
      まじめな人が他人に思いやりがあるわけではありません。神経質で細かいことが気になる人が完全主義であれば、自分の望む完全な形を他人にも要求することがあります。
    • 自分の主張がいつも正しいと考える理論家
      自分の主張が正当であると延々と語る人がいます。理数系の理論家や知的レベルや社会的地位が高い人に多いタイプです。相手の主張する根拠を否定すると、倍になって返ってきます。
    • 他人の迷惑を考えないわがままな性格
      甘やかされて育った人や、高学歴で社会的地位の高い人は自分の主張が否定されることが少なく、絶えず自分の主張が通ると考えがちです。
    • 権力者には逆らえないが目下の者には厳しい
      上司にはへつらうがその部下にはめっぽう厳しいという人がいます。大きな組織で働くサラリーマンに多いタイプです。パワハラをしてしまう典型的なタイプです。
    • 社会的地位や職業的プライドが高い
      社会的地位が高い職業についている人は、周囲からいつも敬われているので人に配慮する機会が少なくなり、自分の考えが正しいと考えるようになります。

(ここまでまとめてみて、粗雑な人+人のことを考えられない社会的地位の高い人と括れるような気がしますね)

 

3.ヘビークレーム対応の体制づくり

(1)法人本部との連携

<施設ではヘビークレームに対応できない>

管理者は「施設運営には家族との信頼関係の構築が不可欠」と家族との人間関係を重視しすぎる傾向があり、毅然とした態度でNoと言えません。
また「福祉は受容が基本」と「まず受け入れてから理解を求めよう」と受け入れてしまいます。
ですから、一定程度トラブルが表面化した時点で、対応窓口を迅速に法人本部に切り替える必要があります。

※なぜ法人対応に切り替えるのか?

→多くのクレーマーはクレームの対応専部署に弱い
○クレーマーは専門部署を次のように考えている

↓↓↓↓↓↓↓↓↓

対応窓口を切り替えただけで、多くのクレーマーが黙る(9割以上)

 

→本部事務局内にお客様相談室が必要
○法人本部事務局にお客様相談室の設置

  • 施設現場の手に負えない強硬なクレーマーが現れた時や、法律顧問に関わる紛争が起きた時などの対応のために、法人本部事務局内に「お客様相談室」と言う部署を作ります。部署名は何でも構いませんが、交渉相手が「クレームや法律に詳しい専門部署である」と分かるような名称が最適です。一般的には総務部内に置かれることが多く、総務部長や総務課長が兼務します。執務室も部署名の表示も必要なく、名刺と名札だけ作ればOKです。
  • 施設現場での対応から本部対応に切り替えた時に、移管通知文に名刺をクリップ止めして郵送します。この名刺を見ただけで「手強い相手が出てきてしまった、施設職員のように甘くないだろう」とプレッシャーをかけることができます。

※名刺の見栄えが肝心
あえて武骨でダサいものを、オシャレ名刺はダメ

<名刺作成上の注意>

  • Eメールアドレスや携帯電話番号の表示はしない
  • 裏面は白紙にして何も表示しない
  • 紙の色は白で光沢が無いもの
  • 法人のロゴやイラストはあえて入れない
  • 字体は明朝体(警察官と一緒)
  • 無骨な印象のものがよい

→法人本部と連携したクレーム対応の仕組み

①ヘビークレームが発生したら本部に報告し本部は監視体制を敷く
②管理者が口頭で拒否し相手が強硬な場合本部で直接対応を検討
③本部対応が必要であれば施設に対応中止と移管を指示
④本部は社外関係機関と相談して直接クレーマーに対応する

 

(2)管理者用「ヘビークレーム対応マニュアル」の配布

→マニュアルが無ければ対応は不可能

施設業務や職員に大きな影響を与えるようなヘビークレームは、それほど頻繁に起こるわけではありません。発生頻度は稀ですから、これらに対応した苦い経験のある施設管理者は少ないと思われます。
ですから、初めてヘビークレームを受けた時に間違わずに対応できるように、マニュアル化して管理者に配布しておく必要があります。

マニュアルの内容を熟読して覚える必要はありません。対応の流れと考え方を理解して、発生した時に適切な対応ができるようにしておけばよいのです。
また、「管理者が自分だけで解決しようとして解決が困難になる」と言う失敗例が多いので、本部との連携対応を理解してもらいます。

<マニュアルのポイント>
管理者だけでは対応できないことを理解させる

<マニュアルの構成>

  • ヘビークレームの事例と対応方法の周知徹底
  • ヘビークレーム発生時の対応
  • 契約書、重要事項説明書、施設サービス計画書のチェック
  • 根拠を示して要求を一度拒否する
  • 法人本部への報告
  • 一度拒否しても最終的には受け入れる場合
  • ヘビークレームを受け入れる場合の手続き
  • 施設サービス計画書の変更
  • 家族面談と説明
  • 面談相手との会話の録音について
  • 要求の手段が暴力的、威圧的な場合などの対応
  • 本部お客様相談室への移管
  • 本部での対応の流れ

(3)主任(リーダー)への周知徹底
→リーダーがヘビークレームにピンと来るためには

家族から職員に対して身勝手で理不尽な要求(ヘビークレーム)があった時、職員は必ず職場のリーダーである主任に相談します。

相談を受けた主任が勝手に判断してその要求に従っては困ります。主任はヘビークレームであることにピンと来て、迅速に管理者に報告しなければなりません。

そのために、あらかじめ主任にヘビークレームの事例を明示し、施設としての対応の流れを伝えておく必要があります。

また、施設の対応の方針を主任が理解することで、職員は不安を感じることなく冷静に対応することができ、施設内の余計な混乱を避けることができます。

・主任の役割
最初にクレームに対応するのは現場の介護職員や相談員です。出来る限りたくさんのヘビークレーム事例を明示して、必ず主任に相談するように指導します。
主任は家族からヘビークレームがあった時、すぐ管理者に報告して対応の準備を行います。
ただし、通常の正当な要求をヘビークレームと勘違いしないように注意も必要です。

・ヘビークレーム発生時の対応方法について
家族から次のようなクレーム(要求・要望)があった時は、その場での回答はせずに「上司に相談して検討させて頂きます」と答えて、主任と管理者に報告を上げてください。
これらの要求を安易に受け入れると、施設業務に大きな支障が出たり要求がエスカレートして後に大きな問題となるため、施設または法人としての組織的な対応が必要になるからです。(ヘビークレームの種類と事例を明示して説明する)

4.ヘビークレームの対応手順

  • クレームの発生
    <管理者への報告>
    ヘビークレームに該当するような要求が発生したら、すぐに管理者に報告を上げます。ヘビークレームに該当する要求はその場での回答は避けて「上司に報告して検討し後程回答させて頂きます」と答えます。「ヘビークレームでは?」と疑われるものについても、同様の対応とします。クレーム受付表に要求内容と要求の手段(要求における言動)を詳細に記録させます。「今すぐに窓を拭け」などと言われた場合は、トラブルを避けるために従います。
  • 施設サービス計画書の確認
    <要求の拒否が契約違反にならないか?>
    「1日5回口腔ケアをしろ」と言うヘビークレームを拒否しようとするとき、いかに根拠が正当であっても施設サービス計画書に「口腔ケアは1日5回」と書いてあったら拒否できません。拒否すると契約違反になってしまいます。
    また、施設サービス計画書に「誤嚥性肺炎防止のための口腔ケアの徹底」などと、あやふやな表現で書かれていると、家族の主張を追認することになり、家族の「1日5回口腔ケアをしろ」と言う要求を拒めなくなります。
    施設サービス計画書は、入所契約書・重要事項説明書と同様に、契約条件を定めた法的拘束力のある約定ですから注意が必要です。
    <「居室に監視カメラを付けるぞ」と言ってきました>
    入所契約上拒否できるか?特養と介護付有料では違う?(特養はできない。有料は居室の固有の権利があるのでできる)
  • クレームの受付と本部報告
    <受付表は具体的に記入する>
    クレーム受付表に要求内容と要求の手段(要求における言動)を具体的に記録します。要求発生以降も執拗に要求を繰り返す場合は、会話を録音することが必要です。
    施設管理者は相談員や主任などと相談して、ヘビークレームとして本部へ報告すべきかどうかを検討します。
    ヘビークレームかどうか疑わしい場合には、暫定的に本部に報告を上げます。本部に報告を上げたクレームについては、その後も対応状況を連絡します。
    要求内容への対応が困難である場合、要求手段が暴力的・威圧的である場合には、相手の言動を詳しく記載します。
    特に言葉は「威圧的な態度で」「暴言を吐いた」などと漠然とした表現を避け、カッコ書き(直接話法)で「お前ぶっ殺すぞ」と言った、と記入しなくてはなりません。
    【クレーム受付け表(例)】
    (クリックで拡大)
  • 会話は必ず録音する※必須
    <正確な記録のための録音>
    後日ヘビークレーム家族に対して、法的な措置を含めた厳正な対応を行う際に、相手の言動に関する記録が不正確では困ります。特に暴力的・威圧的な言動をする家族に対して、この言動を止めさせようとするとき、記録が「暴言を吐いた」などの漠然とした表現では主張が出来ません。
    どのような暴言か正確に直接話法で記録するためには、会話の音声を録音しておく必要があります。
    会話の一言一句を全て記録する必要はありません。後日「貴殿の○○という発言は」と不当な発言を指摘する時に役立ちます。
    <無断録音は許されるのか?>
    答)相手に無断で会話を録音することは違法ではない≠盗聴=刑法で違法ではない
    「無断録音は盗聴だろう、違法だ、訴えてやる!」と言われたら「相手の承諾なく面談の会話を録音する行為は違法ではありません。
    どうぞ警察に訴えてください。あなたとの会話を記録するために必要なのです」と答えましょう。
    ※録音データの取り扱いは重要です=漏洩は大問題
  • 管理者による要求拒否の回答
    <要求を拒否する>
    クレーム発生時に「要求を持ち帰り検討する」と返事をしていますから、要求が受け入れられるかどうか回答しなくてはなりません。
    家族が面会に来た時についでに話すのではなく、できる限りきちんとアポを取って別室で話すようにします。
    面談時には相談員と介護主任など役職者が二名で臨むのが好ましいです。
    受け入れられない要求であれば拒否する意思表示をしますが、拒否することの正当な根拠を説明しなければなりません。
    <ヘビークレーム拒否の正当を説明>
    ケアに関係ない家族の満足のための要求に対しての反論話法
    →「お風呂が好きなので毎日入浴させたい」と言う要求
    当施設では、ご家族の皆様の個別のご要望にも、できる限りお応えしたいと考えていますが、ご要望に沿うことができない事があります。
    ご利用者のケアに必要な業務が最優先であり、限られた職員体制で運営しておりますので何卒ご理解を頂きますようお願いいたします。
    お母さまの生活に必要不可欠と言うことであれば、検討させて頂きます。
  • 暴力的・威圧的な要求手段などの是正を求める
    <暴力的・威圧的な要求手段>
    「大声を上げる」「テーブルをたたく」などの暴力的・威圧的な要求手段は、刑法に抵触する違法行為(犯罪行為)かもしれません。
    職員は恐怖心から要求に従ってしまいますから、管理者から止めるように注意しなければなりません。
    しかし、管理者も身の安全を守らなければなりませんし、若い女性の管理者が暴力的な男性クレーマーに対抗するのは無理があります。
    管理者は「“止めて欲しい”と言うだけ」で十分で、どうしても辞めさせる必要はありません。
    <職員へ直接命令する>
    「今すぐ部屋を片付けろ」「窓が汚れているから拭け」と目の前で対応するように命令する家族がいます。
    施設業務は役割分担があり、部屋を片付けたり窓の汚れを拭くのは、介護職員の業務ではありません。
    管理者が職員に直接命令を止めさせるように、家族に注意しなければなりません。
    「職員の業務には役割分担がありますから、直接指示するのはやめてください。管理者か主任に言ってください」と注意します。
  • 管理者による是正対応
    <「是正対応を行った」と言う事実を記録することが重要>
    後日法的手段をとるための状態
    暴力的・威圧的な要求手段に対しては、本部対応に切り替えた時事実の記録を明示して、「再三中止を要求したにもかかわらず」と警告しますので、管理者による是正対応が必ず必要になります。
  • 正当な理由があれば受け入れる
    <過剰なサービスを制限する決まりが無い>
    家族と面談して要求への回答を説明します。一旦は要求について拒否することを回答しその根拠について説明します。
    また、介護計画書の変更が必要になることと介護計画書の法的な性格についても説明しておきます。
    一旦は「このような理由で基本的にはお断りしている」と要求をお断りしたうえで、「個別の事情がある場合には、ご相談させてください」と検討の用意があることを説明します。
    しかし、施設はサービス量についての上限の規定がありません。過剰なサービスでも正当な理由があれば拒めません。
    「お母様は皮膚が弱いということですし、過去に疥癬の既往歴もありますから、週3回の入浴ではどうでしょうか?」と提案すれば少しで要求を下げることができます。
  • 正当な理由があれば拒めない
    <施設サービスは上限が決められていない>
    →標準的な施設サービスを著しく超える要求
    ○母はきれいずきだから毎日入浴させろ
    ○2時間おきに体位変換しろ
    ○夜間は1時間おきに巡回しろ
    ○面会に来た時にはケア記録を見せて説明しろ
    ○通院の付き添いは全て施設でやれ。そのために預けているんだ
    ○話しかけないと認知症が悪化するそうだ、30分おきに話しかけて。
  • 止むを得ず受け入れる場合
    <要求を受け入れる場合のルール>
    すべてのヘビークレームを拒否できるわけではありません。基本的に「週3回以上入浴サービスは提供できない」という“決まり”が無いからです。
    止むを得ず相手のヘビークレームを受け入れる場合には、組織的な手続きが必要になるように説明しておきます。
    例えば、「お母様の入浴回数を週5回に変更するためには、本部への申請書の提出と施設サービス計画書の変更が必要になります」と説明すれば、相手は「軽い気持ちで言ったのに施設にとっては重大なことなんだな」と事の重大性を多少理解します。
    <要求を受け入れるには手続きが必要と説明>
    →施設にとって重大な問題であると理解させる
    →本部への申請と施設サービス計画書の変更
    <在宅介護の経験が無い家族は施設の仕組みを知らない>
    在宅での介護経験が無くショートステイを使用したことも無ければ、施設サービスは“どんなことができて、どんなことはできないか”も良く理解していないことがあります。
    また「お母様の入浴回数の変更は、サービス提供の契約変更になりますから、施設サービス計画書の変更も必要になります」と説明します。
  • 施設サービス計画書の変更手続き
    <施設サービス計画書は最も重要な契約書である>
    ヘビークレームを受け入れる時には、「施設サービス計画書」の変更手続きが必要であると説明します。施設サービス計画書歯、施設が具体的に提供するサービスを細かく決めるための契約書と言う法的な性格があります。
    入所契約書と重要事項説明書は、施設が提供する標準的なサービスを記載しているだけで「○○さんにどのようなサービスをどれくらい提供する」という具体的な内容は書かれていません。
    施設サービス計画書を作って初めて具体的にどのような介護サービスを提供するのか、入所者や家族と契約できるのです。
    ですから施設サービス計画書は契約書として、施設と利用者に拘束力があり、これに違反すれば債務不履行(契約違反)となります。
    施設が提供する介護サービスの詳細を記述する、法的効力のある書面は施設サービス計画書だけです。
    施設サービス計画書の変更と言う面倒な手続きによって、要求のエスカレートを抑えることができます。
    <過剰な要求のエスカレートを抑える>
    要求の受け入れは契約条件の変更であると理解させる
  • 要求の手段が暴力的・威圧的な場合の対応
    <要求が正当でも手段が暴力的・威圧的な場合>
    机をたたく(蹴る)または暴言を吐くなどの暴力的な言動で威圧して、要求を押し通そうとする人がいます。まず、違法行為(法律に抵触する行為)かどうかチェックします。
    特に刑法に抵触する行為をする相手に対しては、迅速に厳しい対応をする必要があります。”襟首をつかむ”という行為は暴行罪に該当しますし、”お前ぶっ殺すぞ”と相手を脅かす行為は脅迫罪に該当しますから、警察に告発することができます。
    また、故意または過失によって不当に他人の権利を侵害する行為は不法行為ですから、その行為をやめさせたり損害賠償を請求することができます。
    とうぜんこれらの違法行為や不正行為を行う相手に対しては、債務不履行を主張して入所契約の解除を主張することができます。
    介護サービスは正当な理由なく提供を拒否することはできませんが、違法行為や不法行為はこれらの”正当な理由”に間違いなく該当しますから、退所要求をする自由となります。
    <クレーマーの行為が刑法に抵触するケース>
    暴行罪:殴る蹴るの暴力行為の他にも、頭を小突く、襟首をつかむ(机をこちらに蹴る、1杯の水をかける)
    傷害罪:暴行の結果傷害を負わせた場合
    監禁罪:脅して帰れなくしたような場合
    強要罪:無理やり土下座させて誤らせる
    脅迫罪:「お前ぶっ殺してやる」と言葉で脅す、PTSDになれば傷害罪
    恐喝罪:脅迫して金品を提供させる
    不退去罪:「帰ってください」と何度言っても居座る
    名誉棄損罪:公の場で人を誹謗中傷する
    侮辱罪:人を侮辱して精神的苦痛を与える
    威力業務妨害罪:一日に何度も電話でクレームを言ってくる(判例は1日14回)
  • 本部対応に切り替える
    <本部から施設に対して移管を指示する>
    一定期間施設管理者が家族の要求に対し、要求には応じられないと説明したにもかかわらず、納得せずに迷惑行為や暴力的・威圧的な手段で要求を繰り返してくる場合があります。
    本来この時点で対応窓口を本部に移管しなければなりませんが、施設管理者は自分で何とか解決しようと頑張ってしまいます。管理者が頑張っても、ヘビークレーム家族が狡猾な相手になると、施設管理者の対応や発言などの不適切な点を粗探しして、新たにクレームの材料とするなどエスカレートして泥沼化していきます。
    そこで、一定期間進展が無く鎮静化しなければ、本部から施設管理者に対して対応窓口の移管を指示します。
    本部は「この相手は手強く長期化する」と判断したら、施設管理者からの移管要請が無くても積極的に支持しなければなりません。
  • 本部対応方針を決定
    <対応経過の確認と対応方針の決定>
    移管を指示したら、それまでの対応経過を確認し、どのような対応手段が可能か判断し、顧客相談室としての対応方針を決定します。
    家族に対しては、「退所要求の検討」「警察への告訴」「賠償訴訟」などの用意があることを伝えますが、あくまでも最終目的はクレームの鎮静化です。
    <本部対応の目的>
    本部が対応することでクレームの鎮静化を図る
  • 弁護士への相談(相手に通知する時に弁護士を入れたことを書く)
    <顧問弁護士でなくてもよい>
    施設での対応経過を精査したら、相手に対してとるべき対抗手段について弁護士と相談します。法人で顧問弁護士がいない場合には、損害保険会社や弁護士会が提供している「無料相談サービス」を利用します。弁護士への確認事項は次の2点。
    ①要求拒否を主張することの合法性 ②相手の要求手段の違法性
  • 警察署生活安全課への相談(相手に通知するために行く
    <警察官の階級と氏名を確認する>
    次に管轄の警察署の生活安全課に、「入所者の家族から暴力的・威圧的な手段で不当な要求を受けている」と説明して相談に行きます。
    対応経過の記録から、相手の暴言などの記録を持参して、次の2点について相談します。
    ①相手の暴力的な言動が刑法に抵触するかどうか?
    ②抵触するとしたら警察にどのような協力を要請できるか?
    相談した相談相手の警察官の名刺をもらいます。名刺がもらえない時は、階級と氏名を確認してメモします。
  • 市町村介護保険課への相談(役所に行くことが脅しにならないぞと相手にわからせるため)
    <サービス提供拒否の正当な理由であることを確認>
    サービス提供拒否を主張した場合、相手は必ず市町村の介護保険課に「不当なサービス提供拒否である」と苦情申し立てをします。
    相手が苦情申し立てをする前に介護保険課に相談し、「職員への人権の侵害であり健康被害の恐れもある」ことを明確にしておきます。
    <弁護士と警察への相談は最重要項目>
    弁護士・警察と緊密に連携していると見せる
  • 内容証明郵便で要求の中止を求める(受け取ってないと言わせないため)
    <顧客相談室による直接対応>
    弁護士と警察に相談したら、クレーム対応窓口移管すること、クレームの中止を求めることを内容証明郵便で通知します。
    「法人として法的な対抗措置を執る」ことを伝える文書ですから、不適切な表現が無いように弁護士に確認してもらいましょう。
    また、本部対応によって施設職員への暴力的言動が激化しては困りますので、「施設職員は本クレームには一切対応しない」と明確にしておきましょう。
    【(参考)要求の中止を求める文面】
    (クリックで拡大)
  • 不当な要求を止めなかったら
    <「出るところに出る」と言う相手はしない>
    クレーマーはこちらが毅然とした態度で、相手の不当な要求を拒否しようとしたとき、「出るところに出ても戦う」と言う相手はまずいません。
    公の場で不当な要求の中止を求められたとき、自分の立場が弱いことをよく理解しているからです。
    しかし、万一相手の不当な要求やハラスメントを止められなかった時、どのように対応したらよいでしょうか?

ヒント 家族の身勝手で理不尽な行為のために、本来利用者が当然の権利として受けられる医療や介護のサービスが受けられなくなったら、どう対応すべきでしょうか?

研修を振り返って:ヘビークレームへの対応策をまとめてきましたが、原因(引き金)は必ずあります。人と人の関わり合いを仕事としている以上、関わり合い方が重要です。へりくだった態度がベストだとは言いません。
重要なことはポイントポイントできちんと伝える。後回しにしない。ご理解いただけたか確認する。弁護士さんへの相談や内容証明郵便なんて使わない事が一番です。一番は利用者さんの利益を守れることですから。

研修参加記録

うつのみやケアマネジャー協会研修会

R1年10月26日

「 うつのみやケアマネジャー協会研修会 」に参加してきました。

テーマ1「在宅における栄養士の役割と栄養 多職種との連携」
 講師:宇都宮文政短期大学 助教・管理栄養士 間庭昭雄氏
テーマ2「フレイルとオーラルフレイルについて」
 講師:認定歯科衛生士 川上美佐子氏

まずはテーマ1から。
食べることを考ええてみましょう。

施設別の低栄養高齢者の割合

施設別の低栄養高齢者の割合

背景に「入院前からの栄養状態が大切」があります。
「栄養士の思い」として
在宅訪問栄養指導の実施希望アンケート(n=43人)

機会を作りたいと思っている!
次に在宅訪問栄養指導を実施するための仕組みに必要だと感じることアンケート(複数回答)

ここまでの「目的」は

  • 生きることは食べること=食べることは生きること
  • 食事は対象者の楽しみであり、体を支える基本となるもの
  • 食べることを支援することが管理栄養士
  • ケアマネジャーの皆さんに管理栄養士の事を知ってもらいたい、一緒に食べることについて考えたい

まず
1 管理栄養士、栄養士について~どんなことができるの?~

この↑ように栄養士も地域に出るためのスキルを磨いています。

次に1人暮らし高齢者世帯の増加です 。

見事に1人暮らし高齢者世帯が増えて、割合もうなぎ上りですね。

その食事の現状は?(60~91歳)

半分以上の方が1日2食!!

次に「介護が必要となった原因と栄養の関係」

37%は過栄養、25%は低栄養!
ん~栄養って重要だなとしみじみ感じますよね。

「栄養士」さんが地域の勉強会に参加してみると食事の話題は必ず出ます。
でも・・・

多職種からは
・栄養士がどこにいるのか分からない。
・栄養士は何ができるの?
と思われています。

まず「栄養士がどこにいるのか分からない」に関しては

認定栄養ケアステーションなるものがあります!!
連絡先は「028-643-0332」岩本・間庭
(以前、当ホームページに載せた第19回寺子屋わーくでも紹介していますね~)

クリックで拡大

そして次!「栄養士はなにができるの?」

食べるということを対象者、家族の思いに沿ってともに考え、形に変えます。

例えば対象者の「思い」が「自力歩行したい」なら生活機能改善のため、栄養改善が必要です。
目標は半年で2kgの体重アップ。
1日あたり80kcal栄養を多く→80kcal×30日=2400kcal(1か月)
2400kcal×6か月÷7000kcal≒2kgとなります。
ちなみに80kcalとは
こんなイメージ。

「栄養補助食品に飽きてしまう」そんな時も栄養士がお助けします。
エンシュアリキッドという高カロリーの飲み物を使用しての アレンジレシピ「和風フレンチトースト」等々。

「対象者の思い」もしっかり受け止めます。
糖尿病でも、今の生活を維持したいと、お考えなら無理のない血糖管理で、再入院しない事を目標に食事・食材を選びます。

  1. 食べる順番(ベジファースト)血糖値の急上昇を抑える有名な食べ方ですよね
  2. 減塩
  3. 簡単な料理を覚える
  4. 間食の選び方

まず「1食べる順番の話」です

引用:橋田誠一 他(2015)食べる順番の違いによる血糖値および尿中インスリン濃度の変動。日本病態栄養学会誌病態栄養、18、S-112(第18回日本病態栄養学会年次学術集会発表資料より)

確かに!サラダ食べが一番血糖値の上昇が穏やかですね~

次に「料理は苦手」を克服しましょう

包丁を使用しない料理です。

「毎日、食事準備なんかとてもできない」という方には材料と完成品を提案

「塩分制限があるけどみそ汁が飲みたい」という方には

0.3g減塩になる出汁を提案。

余談ですが「化学調味料」なる物は存在しません。戦後、化学に素敵な未来を夢見て命名。
「万能調味料」や「旨味だし」が最近の呼び方のようです。何も悪い成分は入っていません。念のため。

「お勧めの飲み物は」 もちろん、コーラより麦茶ですよね。

ここまでで「皆さんにお願いです」
食べることに関心を払ってください。
・私たち(管理栄養士)につないでください。
1の栄養士についてはここまで

次に
2食べること(栄養)について

体は食べ物からできています

「栄養」とは

  • 人などの生物が生命を維持し生活していくため、体外から食物などの適当な物質を取り入れて、体を成長させ機能を保ちエネルギーを得ること。
  • この働きに必要な成分、物質を栄養素という。

「糖質 4kcal/g」

  • 各組織へエネルギーの供給,各組織において糖代謝が行われる
  • グリコーゲンとして肝臓と筋肉に貯蔵 
    過剰摂取→脂肪組織において中性脂肪に変換し貯蔵~

「たんぱく質 4kcal/g」

  • 体の一部に合成(筋肉、皮膚、器官、血液、髪の毛、爪、歯)
  • 成長・傷の修復
    不足→体のたんぱく質の分解が進み、筋肉量減少、皮膚症状、易疲労

「脂質 9kcal/g」

  • 生体膜の構成成分
  • コレステロールは胆汁酸やホルモンの合成原料
  • 脂溶性ビタミンの腸管からの吸収に必要
    必須脂肪酸欠乏→皮膚症状、生体膜の脆弱化

「ビタミン」

  • 生体維持に必要な微量の有機化合物
  • 体内でほとんど合成されない為、外部からの摂取が必要
  • サプリメントなどにより過剰症も・・・
    ビタミンB1が不足→食欲不振、疲労などの症状があらわれる

「同化と異化」

  • 代謝:生命維持のため生体が行う合成や分解
  • 代謝=同化+異化
  • 同化:エネルギーを使って貯蔵・生体構成成分を合成
    (食べて動けば筋肉、動かないと脂肪)
  • 異化:糖質、たんぱく質、脂質を分解してより小さい物質にするとともにエネルギーを得る(食べないでいると筋肉を削ってエネルギーに変えるサルコペニア)
    ちなみに50歳、男性、事務職なら1日1600kcal必要です。

↑の写真を見比べて下さい。「あんぱん」も「定食」も500kcal!!
「あんぱん」の栄養は「糖質」だけ
「定食」は「糖質」「タンパク質」「脂質」。しかもコンビニで揃って約300円~。

次に主食を比較
同じ150gでも「ごはん」は250kcal。 「全粥」は110kcal。

噛む力と栄養素摂取を比較してみましょう。

噛めないと、タンパク質、脂質、ビタミン類が低値で炭水化物に偏りがちになります。
こんな方は要注意です。

  • 過去6か月以内で5%以上の意図的でない体重減少、もしくは6か月を超えて10%以上の意図的でない体重減少のあった方。
  • 70歳以上でBMI20未満の方。
  • 指輪っかテストでふくらはぎのもっとも太い部分を囲んで指が重なる方。
  • 食事回数が少ない方。

「食べること」は基本的な生活機能です。

  • 生きる
  • 楽しみ
  • 生活機能回復
  • 腸管免疫機能維持
  • 摂食嚥下機能維持
肉体的な健康を作る食事、一例
精神を満たしやすい食事、一例
社会的健康を作る食事、一例(皆でワイワイね)

「健康」とは病気でないとか弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にもそして社会的にも、全てが満たされている状態。

1人でも食事を通して笑顔の人を増やせるように・・
こんな取り組みをしています。

「予防教室計画」

  • 介護食の試食会
    常食を食べている方にはは美味しくないので→介護食のお世話にならないよう健康意識高まるように
  • 男の介護教室
「学校での取り組み」
「就労支援事業所での食事会」
「デイサービスにおける活動」

如何でしたか?食事は栄養内容も大切ですが、食べる環境も大切だということが分かりますね。テーマ1の研修をまとめるにあたり、間庭先生から貴重な資料を提供して頂きました。
ありがとうございます。

テーマ2!!
「フレイルとオーラルフレイルについて」

フレイル(虚弱)とは・・・何年か前から聞く言葉ですね。
↓の図は体と心が衰えていく流れ

「良い」状態から「少し悪く」なって「悪く」なって「介護」になって「一直線」だったり「戻ったり」ですね。

ここで「フレイル診断」あなたは大丈夫ですか?

  1. 体重減少・・・・6か月で2~3kg以上体重減少
  2. 疲労・倦怠感・・訳もなく疲れた感じ
  3. 活動量の低下・・習慣的な軽い運動、体操(農作業含む)及び定期的な運動をいずれもしない
  4. 筋力の低下・・・握力を測定(利き手で男性26kg未満、女性18kg未満)
  5. 歩行速度の低下・歩行速度が1m/秒未満

以上の3つ以上該当・フレイル
1~2つ該当・・・・プレフレイル
該当なし・・・・・・健康

自己評価できる「フレイルの気づき」
指輪っかテスト

  1. 両手の親指と人差し指で、ふくらはぎを囲めない(お肉付きすぎ?)
  2. ちょうど囲むことができた(ちょうどね)
  3. 指とふくらはぎの間に隙間ができた(痩せ?)

ふくらはぎが細すぎる人は・・サルコぺニア・・?
ギリシャ語で「サルコ」:筋肉、「ペニア」:喪失

  • 加齢や病気などで筋肉の量が減少し、全身の筋力が低下した状態をサルコペニアといいます。
  • サルコペニアの指標は(65歳以上の方)
  1. 両手足の筋肉量(筋肉量減少)
  2. 握力(筋力低下)
  3. 歩行速度(身体機能の低下)

たかがふくらはぎ、されどふくらはぎ
ほっそりふくらはぎの人は要注意!他にも・・

  • 食事摂取量や摂取する食品の多様性が少ない
  • 舌力、咬合力(かみしめる力)、滑舌などの低下
  • 家族や友人と一緒に食事をする供食の頻度が少ない=孤食(あ!以前ホームページ「秋健康祭り」でも同じ内容まとめてましたね)
  • ウツ傾向の増加

さらに4年後「ほっそりふくらはぎ」の人の方が3.2倍も多くなくなっていたなんてデータも・・・

「口」の衰えがフレイルを早める

  • 食べる:噛む、味を識別、味わう、異物を発見
  • コミュニケーション:会話、笑う、怒るなどの表情、キス
  • 唾液の分泌(唾液は1日1.5ℓ!):舌や口の動きをスムーズにする、食べ物の消化を助けるを清潔に保つ、口の粘膜の保護
  • 息をする:呼吸、咳、くしゃみ、あくび
  • 飲み込む:むせを防ぐ(嚥下)
  • 歯だけでなく唇、頬、舌、のどに意識を向けましょう
  • 加齢によって口も衰える→オーラルフレイル「口腔機能低下症」

60歳で歯を24本残しておかないと・・80歳では20本残りません。8020運動ありますよね~。20本残ればたくあんやお煎餅など固いものを食べられます。

いつの間にか進行するオーラルフレイル

第一段階・・口腔リテラシーの低下(口への関心が低下すること)
原因として、加齢による社会性の低下(ソーシャルフレイル)、閉じこもり・困窮・孤食・病気(特定高齢者は関心が高く口の中キレイ、要支援で関心が低くなります)

例えば

  • 歯が抜けても直に歯科医院に行かず腫れてからようやく通院
  • 口が匂うと言われても気にしない
  • 食べ物が噛みにくくても支障が無いのでかまわない
  • しっかり歯磨きをしない・・虫歯、歯周病、歯の喪失

第二段階・・オーラルフレイルと呼ばれる段階

どんな症状か?

  • 滑舌低下(パタカラテスト):舌の力や、息の力、心肺機能の低下(1秒5,6回で健常者)
  • 食べこぼし、わずかなむせ
  • 噛めない食品の増加
  • 食欲低下や食べれる食品の減少(栄養不足)

一つ一つの症状は生活に支障をきたさなくても、積み重なると体全体の機能低下フレイルに。

第三段階・・口腔機能低下症が進行し身体的なフレイルが顕著に見られる段階

  • 噛む力が弱くなる
  • 舌が力強く動かない
  • 食べる量が明らかに減る

筋力の衰えサルコペニアへ突中=身体の虚弱(フィジカルフレイル)

第四段階・・重度のフレイル期

  • 摂食嚥下障害(食べれない飲み込めない)
  • 咀嚼機能不全

フレイル・・可逆性がある

第二段階で口の中の変化に気づき

  • 歯科検診に行く
  • 筋力低下を防ぐためにたんぱく質を摂る(体重60㎏の人なら80g)
  • 運動で筋力を付ける
  • 社会性を高め人と良くしゃべる

などのケアを行えば第一段階に戻ることができる!!
第三段階からも戻れるが段階が進むと戻り幅が小さく可能性も低い・・・

口腔機能維持のために普段から気を付けたいこと

  1. きちんと歯、舌磨きをする
  2. しっかり噛んでしっかり食べ「食力」を維持して低栄養を防ぐ
  3. 歯ごたえのある食材を意識して取り入れる
  4. かかりつけ歯科医をもち定期的にチェックしてもらう
  5. 継続的に運動したり、小まめに体を動かす
  6. 外出を増やし一人で食事をする回数を減らす

⑤⑥は直接口に関係ないように見えますが、口を動かすのも筋肉、筋力です。食べる楽しみが広がる社会参加は「食力」の維持に大きく関係

フレイルを予防するための3本柱

今までの内容を踏まえて
高齢者の口腔ケアについて

歯と口の役割

  1. 咀嚼機能
  2. 摂食嚥下機能
  3. 呼吸機能
  4. 発音機能
  5. 表情をつかさどる等あります

1.咀嚼機能
  咀嚼機能=噛む機能
 噛むこと
 ↓
 脳への血流を増やす
 ↓
 脳の働きを活発にする

噛むことの8大効用

  1. 肥満予防・・ゆっくりたくさん噛むことで満腹感が得られ食べすぎを防ぐ
  2. 味覚の発達・・よく噛めばじっくり味わえて味覚が発達する
  3. 言葉の発音がはっきり・・口の周りの筋肉が発達し、舌の動きもよくなり、言葉の発音がはっきりする
  4. 脳の働きを活発にする・・噛むことで脳の血流が増加し、脳を刺激して働きを活発にするため脳の若さを保ち老化を防止
  5. 虫歯、歯周病、口臭を予防・・しっかり噛むことで唾液の分泌が増え、唾液の抗菌作用により栗の中の自浄作用が高まる
  6. 癌を予防・・唾液に含まれる酵素には食品中の発がん性を抑制する効果がある
  7. 胃腸の働きを促進・・よく噛むことで唾液中の消化酵素の分泌が盛んになり、細かくかみ砕けば胃腸への負担を和らげる
  8. 全身の体力の向上(フレイル予防)・・よく噛むことで全身の活力がみなぎり体力が向上する

咀嚼機能と全身の健康の関係

2.摂食嚥下機能

どのようにして食べているのか?飲み込むのか?
高齢者の摂食嚥下機能の特徴

  • 歯が少なくなり咀嚼力が低下する
  • 飲み込む反射の出現が遅くなる
  • むせが出にくくなる
  • むせや咳込みの勢いが弱くなる
  • のど仏の位置が下がり、飲み込むときにのど仏が上がりにくくなる
  • 唾液が少なくなる
  • 味覚が変化する
  • 注意力や集中力が変化する
  • 舌圧力の低下による嚥下反射の低下

摂食嚥下の障害
高齢者の中には脳血管疾患やパーキンソン氏病などの疾病、加齢に伴う口や喉などの筋力や知覚の低下により、摂食嚥下機能に障害をきたす場合がある。

「機能的障害」・・脳血管障害、脳腫瘍、パーキンソン氏病、脊髄小脳変性症筋ジストロフィー、ALS、加齢に伴う機能低下症(オーラルフレイル)

「器質的障害」・・口腔・咽頭・食道の悪性腫瘍やその摘出、炎症、外傷、奇形等

摂食嚥下機能が障害されて起こる問題
摂食嚥下機能障害が起こると・・「口から食べられない」「むせる」というような症状

  • 誤嚥による肺炎や窒息
  • 脱水や低栄養
  • 食べる楽しみの損失

誤嚥性肺炎とは

不顕性誤嚥・・気道の感覚が低下していると誤嚥してもむせや咳込みが起こらず夜間の不顕性誤嚥は、肺炎に罹患しやすい

高齢者に多い口腔のトラブル

  • 高齢になると噛む力の低下やストレス、薬剤の影響で唾液の量が減少する
    →「口腔乾燥(ドライマウス)」「口腔内不潔」「虫歯の進行」「口内炎」
  • 口の周りの筋肉、舌圧の筋力低下
    →「舌苔の付着」
  • 歯磨きが面倒、病気、身体的障害で歯磨きができない
    →「口腔内不潔」「歯周病」「口臭」「歯ぐきからの出血」「ぐらぐら動揺する歯」「歯肉の退縮」「歯石」
  • 歯科医院へ行けない
    →「入れ歯のトラブル」「バネが壊れたままの入れ歯」「入れ歯が当たり口腔内に傷ができる」
  • 服薬によっては治療ができないケースも少なくない

口腔乾燥

  • 薬による副作用
    降圧剤、利尿剤、抗ヒスタミン剤、向精神薬、鎮痛剤、抗コリン材、抗パーキンソン薬、鎮咳去痰剤、ホルモン剤、アレルギー用薬、風邪薬等
  • 口呼吸
  • 全身疾患(糖尿病、腎不全、シェーグレン症候群等)
  • ストレス、緊張
  • 廃用症候群(会話の少なさ、咀嚼回数の減少等)
  • 放射線障害
  • 唾液腺の萎縮(エイジング)

唾液について
唾液の分泌量はどのくらい?

  • 1日の分泌量:1~1.5L(個人差は大きい。体調による変動も大きい)
  • PH6.3~6.8
  • 唾液腺・・3大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)
    ※頬杖をつくポーズで丸くマッサージするだけで唾液出ます。

唾液の役割

  1. 咀嚼時の食物との潤滑作用
  2. 消化・吸収の促進
  3. ウイルスや細菌からの感染予防
  4. 外来刺激に対する防御
  5. 清掃、自浄作用
  6. 義歯の安定
  7. 義歯床下粘膜の保護(唾液不足で舌癌になる可能性も!)

歯周病と身体の病気

  • 狭心症、心筋梗塞、心内膜炎
  • 糖尿病
  • 胎児の低体重、早産
  • バージャー病(閉そく性血栓血管炎→手足の血管が閉塞し、手足の冷えやしびれ、痛みなどの症状、喫煙者に多い)
  • 認知症
  • 動脈硬化
  • 肺炎
  • 肥満
  • 骨粗しょう症

ここまで振り返って、食べることの大切さ、そして食べるためには口の状態が重要であることが良くわかりました。歯磨きを適当に済ませて、いつのまにか虫歯だらけになることは避けたいですね。何歳になっても美味しく固いお煎餅や沢庵を食べて、お茶をすすりながら楽しく、おしゃべりしたいものです。

参考までに
フレイルチェックシート

1この1年間に転んだことがありますかいいえはい
21Kmくらいの距離を不自由なく続けて歩くことができますかはいいいえ
3目は普通に見えますか(眼鏡を使った状態でもよい)はいいいえ
4家の中で良くつまずいたり、滑ったりしますかいいえはい
5転ぶことが怖くて外出を控えることがありますかいいえはい
6この1年間に入院したことがありますかいいえはい
7最近食欲はありますかはいいいえ
8現在、たいていの物は噛んで食べますか(入れ歯を使ってもよい)はいいいえ
9この6か月に3kg以上の体重減少はありましたかいいえはい
10この6か月に、以前と比べて体の筋肉や脂肪が落ちてきたと思いますかいいえはい
11一日中家の外には出ず、家の中で過ごすことは多いですかいいえはい
12普段、2~3日に1日程度は外出しますか(庭先のみやゴミ出し程度は含まない)はいいいえ
13家の中、あるいは家の外で、趣味・楽しみ、好きでやっていることはありますかはいいいえ
14親しくお話しできる近所の人はいますかはいいいえ
15近所の人以外で、親しく行き来するような友達、別居家族、親戚はいますかはいいいえ

右側に該当した場合、1点として合計点数は?

4点以上の人は、すでにフレイルが始まっています。3点以下の人に比べて2年後~4年後に日常生活に障害が出るリスクは3倍以上!!
(出典:東京都健康長寿医療センター研究所)

研修参加記録

第7回多職種連携研修会

R1年10月19日

「ライフプランRose:髙木明美ケアマネ」主催の多職種連携研修会に参加してきました。

今回のテーマは「在宅生活における医療系サービスって何があるの?」です
訪問診療とは・・・・・・さつきホームクリニック   :月永洋介医師
訪問看護とは・・・・・・訪問看護ステーション花みずき:藤田和子氏
訪問リハビリ事業所とは・さつきホームクリニック   :水沼史明氏

○訪問診療

まずはさつきホームクリニック月永先生のお話です。

医療には「入院」「外来」「在宅」の3つがあります。

在宅は通院困難な方。病院に行けない方。
先生は洒落も交えて在宅では「内科」でも「外科」でも「泌尿器科」でもない高齢化における「高齢科」が必要だと話します。

在宅の役割の変化として、最初の受け皿は大きくイメージは逆三角形。

次に訪問診療と往診の違いです。

  • 往診は患者さんの求めに応じて自宅に伺って診察。
    一般の診療所的には時間的にも経営的にも大変ですが24時間365日の縛りはありません。
  • 訪問診療はあらかじめ計画を立てて定期的に伺って診察。

診療報酬は優遇されています。月1回の管理料でも24時間365日の縛りがあります。 (昔は月2回と決まっていましたが、現在は月1回でも良い。)

どんな病気の人に+何ができる=何でも看ます。癌も身障も。
さつきホームクリニックにできること・・色々できる、が安心になる。

  • 癌に対する在宅緩和ケア
    →オピオイド使用、IVH、経管栄養、レスピレーター、看取り
    (その他も話していましたが書き取れませんでした・・)
  • 神経難病のケア
  • 高齢者の在宅療養

お金はどれくらい?

・居宅1割月2回で6千円~。月1回4千円~。
・施設で10人だと月2回1590円。月1回千円~。
・18000円上限(追加で訪問しても)。
・従来の先生の外来にかかっていても、さつきホームクリニックは大丈夫。
 ペースメーカー等は従来の先生のまま。(従来の先生が了承してくれれば)

努めていることは過不足の無い
医療の提供。
⇒判断が難しい
価値観、人生観も色々
治せる、治せない
治す、治さない
望む、望まない
看取り
さつきホームクリニックでは
9時~10時で会議をする。
療養環境に問題がある時は
家族やケアマネに相談する。

いくつかのパターン
・ただの通院ができない人→訪問診療のみ
・訪問診療+訪問看護(介護保険)
・癌の人は訪問診療+訪問看護(医療保険)

○訪問看護

訪問看護ステーション花みずき 藤田氏のお話です。

・医師の指示書が必要です。
・要支援、要介護の認定が下りている人。
・ターミナルは医療保険。

サービスの特徴は:居宅要介護者(主治医がその治療の必要の程度につき厚生労働省で定める基準に適合していると認めたものに限る)について、その者の居宅において看護師その他厚生労働省で定める者により行われる療養上の世話または必要な診療の補助をいう。通院が困難なものに対して、医師の指示で看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が行う。

サービス内容は

  • 健康状態のアセスメント
  • 入退院時の支援
  • 日常生活の支援
  • 社会資源の活用支援
  • 心理的支援
  • 認知症の支援
  • 家族等、介護者の相談、助言
  • 精神障害者の看護
  • 医療的ケア
  • リハビリ看護
  • 病状悪化の予防
  • 重症心身障害の看護
  • エンドオブライフケア(看取り)

介護保険利用の訪問看護

  • 1回20分(リハビリの区切りと利用者からの連絡に応じて24時間行える体制がある等)、30分(看護師の訪問は最低30分~)、1h、1.5hの4区分。
  • 利用は週3回まで。ターミナルは別。

訪問看護は

  • 訪問看護ステーション
  • 病院、診療所(介護のみなし指定)が行えます
  • 幼児から高齢者までが対象
  • 看護とリハビリで費用が変わります。下表
  • 内容は個々のニーズに合わせる
  • 多職種連携
  • 療養生活を支援
20分未満30分未満30分以上
1時間未満
1時間以上
1時間30分未満
理学療法士等
の場合1回
指定訪問看護ステーション312単位469単位819単位1122単位297単位
病院・診療所264単位397単位571単位839単位

○訪問リハビリ

さつきホームクリニック水沼氏のお話です。

  • さつきの訪問リハビリ事業所はR1年5月1日開所。月曜~金曜。9時~17時。
  • 介護保険と医療保険の訪問リハビリ。
  • 利用できる人は、今のところさつきホームクリニックに診てもらってる人です。

そもそもリハビリとは、広い意味で「その人らしい生き方の再獲得」、狭い意味では「PT、OT、STが医療行為として行うこと」

  • 色々な人が関わることがリハビリ。(近所の人や家族、友人)
  • 医師が必要と認めた人に対して」居宅を訪問します。
  • 本人の選択を大切に。プロとしてのアセスメントを伝えて、本人(家族)に選んでもらう。
  • OT、PT、STと分かれているがまったく別ではない。
  • その人なりの、その人らしい生活を作業を通じて支援。
  • 予後の予測が得意。

訪問リハビリを行える事業所

「訪問看護ステーション」と「訪問リハビリ事業所」は何が違う?
「本質は全く同じ」制度、保険上の算定の違いのみ。

詳しくは下の表と訪問看護の表を比較

施設名単位(1回につき)
病院、診療所292単位
介護老人保健施設 292単位
介護医療院 292単位

いかがでしたか?
自分の住む地域にある医療的資源やサービスを知ることで少し安心できますよね。
多少なりとも皆様の情報の一部になればと考えアップしています。
ご活用ください。

<補足>
OT=occupational therapist作業療法士の略称
PT=physical therapist理学療法士の略称
ST=speech-language-hearing-therapist 長っ 言語聴覚士の略称

訪問看護、訪問リハビリそれぞれ加算がありますが割愛させて頂きました。

さつきホームクリニック訪問看護ステーション花みずき も、それぞれHPあります。

興味のある方は是非、検索してみてください。


研修参加記録

秋健康祭り:社会的処方って何??

R1年10月5日

村井クリニックにて秋健康祭り開催
院長講演「社会的処方って何?」

クリックで拡大

まず「中之条研究」について

群馬県中之条町の65歳以上の住民5,000人を対象に日常の生活動作と病気予防の関係について2000年以降継続的に実施されているもの。
自立度や睡眠時間食生活など膨大なアンケート調査を行い内2,000人には詳細な血液検査、遺伝子解析を行いました。さらにその内の500人には身体活動計を携帯してもらい24時間365日の身体活動状況をモニタリング(みんなが好きな言葉^-^)

健康づくりには運動が効果的とは言われていたもののどのような運動をどの程度までは言及されていませんでした。この中之条研究が行われるまでは。
この研究によって単に歩くだけでは十分ではなく、歩く質(強度)も重要なことが分かっています。
健康維持、増進、健康寿命の延伸には1年の1日平均歩数が8,000歩以上で、その内、その人にとっての早歩き時間が20分以上含まれることが期待されます。

1年の1日平均の身体活動からわかる予防基準一覧

歩数中強度の活動時間予防できる病気
2,000歩0分寝たきり
4,000歩5分うつ病
5,000歩7分30秒要支援、要介護、認知症
心疾患、脳卒中
7,000歩15分ガン、動脈硬化
骨粗しょう症、骨折
7,500歩17分30秒筋減少症、体力の低下
8,000歩20分高血圧、糖尿病、脂質異常症
メタボ(75歳以上)
9,000歩25分高血圧(正常高値血圧)
高血糖
10,000歩30分メタボ(75歳未満)
12,000歩40分肥満

12000歩(うち中強度の活動が40分)以上の運動は健康を害する時も・・・

中之条町における医療費抑制効果(カイポケセミナーで聞いたことを思い出します。順序逆ですが良かったら管理者のFaceBookをご確認ください。)「身体活動計を用いた新しい健康づくり」の中で身体活動計の装着が健康意識の向上を促進し、身体活動を含む生活習慣の改善につながった結果、医療費抑制の効果があったと発表。

国民健康保険医療費比較(活動計装着者との比較)
・40~65歳国保加入者の医療費比較(1点10円)
・3年間の5月診療分における医療費

・70~74歳国保加入者の医療費比較
・3年間の5月診療分における医療費

国保医療費を活動計の装着の有無で比較すると低いことが分かる。装着前から元気な人が使用しているため医療費が低いことも考えられるが、活動計を装着することにより、一層健康意識の向上、健康の保持増進につながっていると考えられる。さらに元気な状態が継続されることで医療費が低く推移していることからも効果はあると考える。

この他、村井先生は「1サロンに参加していると要介護になりにくい」「2孤独・孤立は健康被害を及ぼす」「3社会とのつながりは認知症の発症率を減らせる(リスクも半減)」「4前向きな感情でも認知症の発症率を減らせる」「5孤食はうつになりやすい」等々おっしゃってました。

村井先生は分かりやすい説明をしてくれたのですが、書きとめきれなかったので中之条研究のように調べてみましょう!

1.サロンに参加していると要介護になりにくい
2.孤独・孤立は健康被害を及ぼす

まずは「1.サロンに参加していると要介護になりにくい」をネットで検索すると「数値が示すシニアコミュニティの威力《笑顔》が生み出す要介護者抑制への道」社会デザイン研究なるものを発見。

2018年8月の記事です。
「要介護者の高齢者650万人。介護費用が10兆円に達し社会負担の増大が大きな課題になりつつある。これらを大きく減らす策として考えられているのが「高齢者向けコミュニティづくり」。施設ではなく日常生活の中で高齢者同士が自然な形で交流する空気、環境をつくることで要介護状態になりにくい社会を目指す。行政だけでなく学術機関や企業が動き出そうとしている。」・・とあります。

高齢者20万人の生活と健康を追跡したビッグデータ。このデータを蓄積しているのは、高齢者がどのような暮らしを送ると健康を維持できるのかを調査するプロジェクト「日本老年学的評価研究(JAGESジェイジズ)」。大学や自治体が協力して推進している。

これまで健康を維持するためにはウォーキングや体操、食事の工夫が重要と考えられてきた。ただJAGESの研究結果からは、そういった運動や適切な食事を習慣づけるだけでなく社会そのものの設計が健康寿命に大きな影響を及ぼすことが分かってきた。

社会の設計という点ではまず「どこに住んでいるか」によって健康寿命の平均値が大きく異なることが分かっている。JAGESに協力する53の市区町村を比較した結果良いところと悪いところでは要介護リスクがさいだい2.9倍も違う。それも自然豊かな地方に暮らす人ではなく空気が悪いと考えられている都市部に住む人の方が圧倒的に健康寿命が長い。

市区町村別の高齢者の健康状態は2.9倍の差がある。
図は市区町村別でIADL(日常生活動作)が低下している高齢者の割合。88,370人の要介護認定を受けていない高齢者が調査対象。

下は定期的に運動している人に1人でやっているのか誰かとやっているのかを尋ね、その後の要介護状態になったかどうかを追跡調査したところ誰かと一緒に運動している人の方が要介護状態になりにくいというデータ。

どちらのデータも「社会的な環境」が大きく影響していることを示唆している。周囲に人がたくさんいるところで関わりを持ちながら暮らしていくことが重要。
自然と出歩いて人と会うような生活ができる街に住めば健康でいられる可能性は高い。

その他コミュニティ参加者の方が要介護状態になりにくいとの報告も。

愛知県の武富村で高齢者が集まる場所を地域に作り、夏祭り、クリスマス会、囲碁の会お茶のみしゃべる会などを開催。これまで地域活動がなかった場所に立ち上げこれらの会に参加した人たちと参加していない人たちの状態が5年でどのように変わるかを調査。

具体的には5年後の要介護認定者数の比較。
結果はコミュニティに参加した人のグループは要介護認定者の割合が約半分。

重要なのは、こうした環境を日本全国に展開すること。地域に働きかけた取り組みは小さな一部の動きでしかないが、日本の超高齢化社会という課題を解決するには、これを全国展開して社会全体を変えていく必要があるようです。そのためには企業が動きビジネスとして自走する仕組みづくりが欠かせない。などなど企業も含めると話が大きくまとまらなくなるので「1サロンに参加していると要介護になりにくい」「2孤独・孤立は健康被害を及ぼす」に関してはこの程度で。

3.社会とのつながりは認知症の発症率を減らせる(リスクも半減)
4.前向きな感情でも認知症の発症率を減らせる

次に「3社会とのつながりは認知症の発症率を減らせる(リスクも半減)」「4前向きな感情でも認知症の発症率を減らせる」こちらに関しては「国立長寿医療研究センター」などのチームが発表しています。

調査対象は全国10市町の65歳以上男女1万3984人。2003年から9年追跡。認知症で介護が必要になった人数と社会とのつながりの関連を調べています。

その結果①配偶者がいる②同居家族の支援がある③友人との交流がある④地域の活動に参加している⑤就労している・・のいずれかに該当すると認知症の発症リスクが減っていました。

該当項目が0~1項目の人は892人で、そのうち追跡期間中に認知症を発症したのは258人。5項目をすべて満たした1,818人では145人が発症。

年齢や健康状態などの影響を差し引いて計算すると0~1項目の人に比べて5項目の人は認知症を発症するリスクが46%減少。4項目だと35%減、3項目でも25%減だったとあります。

幸福感や満足感などポジティブな感情を強く持つ人ほど健康状態が良いという多くの研究報告があります。こちらは愛知県の6自治体に住む65歳以上の高齢者14,286人を4年間追跡。

ポジティブ感情と認知症発症との関連について検討しています。ポジティブ感情は5項目「今の生活に満足していますか」「普段は気分が良いですか」「自分は幸せな方だと思いますか」「こうして生きていることが素晴らしいと思いますか」「自分は活力が満ちていると思いますか」に「はい」「いいえ」で解答してもらう方法で測っています。

4年間に男性で333人:4.9%。女性で468人:6.3%が認知症を発症しました。

調査開始時点で5項目すべてに「はい」と回答していた高齢者は「はい」が1つもなかった高齢者に比べ、認知症になるリスクが男性でおよそ50%、女性では70%減少していました。(表1)また「はい」の項目が1つ増えるごとにリスクはおよそ13%から21%減少していました。(図1)

表1 ポジティブ感情の「はい」の項目が多い人ほど認知症になりにくい

  • 表の数値は、統計的な手法により認知症の発症に関連する要因を考慮したうえでの認知症発生リスクを表す
  • モデル1で年齢調整とあるのは、年齢が同じとみなした場合に、「はい」と答えたポジティブ感情項目が1つ増えるごとの認知症発症リスクを表す。モデル2と3の数値は、さらに健康状態や社会関係などが同じとみなした場合のリスクを表す
  • ポジティブ感情が1つ増えるごとに表の数値倍認知症発症リスクが減る

図1 ポジティブ感情と認知症発症の関連

5.孤食はうつになりやすい

最後に「5孤食はうつになりやすい」です。

1人で食事をすることが多い「孤食」の高齢者は一緒に食事をする人がいる高齢者に比べて男性で2.7倍、女性で1.4倍もうつになりやすいという調査結果が東京大学医学系研究科の谷友香子研究員らの研究チームが発表しています。

調査の対象は、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者で2010年時点で落ち込むなどのうつ症状のなかった全国24市町の37,193人。対象のうち1人暮らしの男性で85%、女性で79%が孤食だった。3年後に「高齢者用うつ尺度」という簡易テストを使って、うつ症状の有無を調べた結果、約4,400人がうつ傾向と判定。

その結果、家族形態と男女別で分析すると、1人暮らしの男性は孤食だと鬱になる可能性は2.7倍、女性は1人暮らしでも誰かと同居していても孤食だと同じ程度の約1.4倍になった。同居人のいる男性では、1人で食べるのと同居人と一緒に食べるのとで、うつ症状の出やすさに、はっきりした差はなかった。

調査結果について研究チームは「家族や友人と食事をしたり、自治体の給食サービスなどで共食を進めたりすることがうつ症状の予防につながる」とコメントしています。

ここまでの話をまとめますと「健康と幸せ」とは
・病院で薬を出すだけではなく
・サロンや交流を促しボランティアに参加する
「運動をして薬を減らし、人とのつながりを持つ」と村井先生はおっしゃってます。

病院に話を聞きにくれた地域の高齢者に熱心に予防を勧める、医師の鏡のようでした。

研修参加記録

SDH講習会

R元年9月28日

「SDHを見つけよう。社会的処方とアウトリーチにチャレンジ。直面する困難と人権・希望について」
講師:栃木保健医療生協 関口 真紀 医師

まずは事例から
・トラック運転手52歳

・糖尿病で治療中
・不定期にしか受診しない
・処方薬も時々内服するのみ
・食事治療に関する栄養指導もしたのに守れていない
・喫煙を続けている
左は医師の目線
これをどうしてだろうと深く掘り下げる

すると
・歩合制なので収入が不安定
・3割負担の薬代を出すのも大変な状況
・一人暮らし
・長距離トラックで家を空けることが多く自炊できない
・予約の日に仕事が入ると受診できない
・眠くなるので缶コーヒーとタバコに頼っている
本人のより詳しい状況を知ることで、
なんで放って置くんだろうではなく
仕方がない状況なのかと思い知らされる

これがSDH(Social Determinants of Health)「健康の社会的要因」
貧困や生活環境が疾病や健康に作用するということ。

先生たちは、こんなSDHを見つける「気になる患者カンファレンス」宇都宮協立診療所医療事務職員で取り組んでいます。これは病気だけでなく環境や療養を見る、全て自己責任とは言い切れないという考えからです。

始めたころは「今まで話すほどではないと自分の中に仕舞い込んでいた情報」
視点を変えることで「気づきや学びにこだわらず何か気になることを出すことに」

その中から抜粋して・・

1)未成年女性「咳が続く」と受診

数か月咳が続く。妹も気管支ぜんそく。ペット飼育。家族は喫煙。家族の代わりに就労。あまり裕福でないので治療費が心配。

カンファでの発言は

  • 保険は国保
  • 家族と話せれば無料定額診療事業につながるか
  • 家族構成などもう少し情報収集を

その後:中断せずに受診継続。今後も注意して見守ることに。

2)中年男性「無料定額診療事業の申請」

無料定額診療事業を行っていたため来院。派遣で仕事をしていたが体や手足の痛みから仕事が行えなくなった。ホームレスだった時期もある。無料定額診療の申請をし受診。生活保護の申請もした。

カンファでの発言は

  • 中年で仕事が見つからず本当に大変な仕事を続けなければいけない
  • 体を壊して仕事を辞めざるを得ない人が増えている
  • 一生懸命な人
  • それでも経済的困難になってしまう
  • 企業の利益より人を大切にする社会にしてほしい

この他にも気になるカンファレンスがありましたが今回は2件のみで。

上記にある「無料定額診療事業」について

これは社会福祉法の規定に基づき生計困難者が経済的な理由によって必要な医療を受ける機会を制限することの無いよう、無料または低額な料金で診療を行う事業です。

対象者:低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者等の生計困難者

栃木では:済生会、協立診療所、ふたば診療所の3か所が行っています。

宇都宮協立診療所では「生活相談チームの取り組み」として社会的処方とアウトリーチにチャレンジしているようです。

メンバーは事務・看護師・栄養士など多職種

活動内容:無料定額診療事業、地域包括細谷宝木との連携、地域訪問

この活動でも多数のケースがありましたがまとめると「訪問を通じて協立を知らない人も多くいること、困ったことがあってもわからないまま生活している、訪問しなくてはわからない地域訪問の必要性を実感」とあります。

そして先生はこう続けます「私たちが直面する困難な社会」

これは、低所得・貧困との隣り合わせ・家族を作り難い人々が急増している=「アンダークラス」の増大と。

ここで言うアンダークラスとは先生が作った言葉ではなく早稲田大学の偉い教授からのようです。そして比較する数字もです。あくまで参考としてご覧ください。

正規労働者アンダークラス
週平均労働時間44.5時間36.3時間
個人の平均年収370万186万
貧困率7.0%38.7%
資産ゼロの世帯の比率14.5%31.5%
未婚率男性31.0%66.4%
未婚率女性33.5%56.1%
生活に満足35.6%18.6%
学校でのいじめ14.9%31.9%

これらの人々はいま私たちの目の前にいる。そして、これから大挙して医療介護の世界に登場する。

  • 親を介護しながら親の年金を頼りに生活する独身男性
  • 親と同居しているが介護しきれない独身女性
  • 兄弟ともども要介護状態独身男性、貯蓄無し
  • 急に病気を告げられた独身女性、兄弟貯蓄無し

極めて低所得で貧困と隣り合わせ。肉体的にも精神的にも追いつめられる。家族を形成しても子供を産み育てる、基本条件すら満たせない。

このまま放置するなら日本社会に教育、住宅、医療、福祉、社会保障などあらゆる領域で計り知れない困難が生み出される。

個人の自助努力に任せるなら悲惨な結果を。

公的施策によって援助するとしたら膨大な財源が。

これだけ多数の人々に不安と苦痛に満ちた人生をもたらしてしまったことに対する社会の責任は極めて重い。

アンダークラスの拡大に歯止めをかけすべての労働者に安定した雇用と貧困線を下回らない所得を補償することは日本の直面する最大の課題。

これによって消費は底上げされ景気は回復し社会は安定と安心を取り戻す。

必要なのは人々が様々な組織や集団を通じ、ともに解決に向けて立ち上がること。

先生が教えてくれた最後のデータがアメリカのシンクタンク ビュー研究所から

自力で生活できない人を政府が助けてあげる必要はあるかについて

「救うべきだと思わない」と答えた人の割合

  • イギリス:8%
  • ドイツ :7%
  • イタリア:9%
  • 中国  :9%
  • アメリカ:28%
  • 日本  :38%

その国の宗教観、価値観、様々なものが反映されています。

先生がおっしゃるように、皆が少しずつ変わる必要がある社会に突入しています。初めから政府頼みは良くないでしょう。上を見続けてもきりはありません。

自分で幸せを見つけて満足する生活が一番です。

でも頑張っても頑張っても報われない人がいたらどうなのでしょう。
自分がそうならない保証はありますか?

そんなことを考えさせてくれる講習でした。

研修参加記録

第19回寺子屋わーく

R1年9月17日

今回は「ホームヘルスケアタウンうつのみや」主催の勉強会に参加してきました。 

テーマは「栄養ケアステーションについて学ぼう」
講師:村井クリニック管理栄養士 岩本啓子氏
          言語聴覚士 福田麻希子氏

司会:済生会宇都宮病院 看護師 纐纈由美子氏 座長:村井クリニック 村井邦彦院長

初めに言語聴覚士の福田さんから「摂食・嚥下機能と食事支援のポイント」を聞きました。

嚥下は5つの工程で成り立つそうです。

  1. 先行期
  2. 準備期(咀嚼期)
  3. 口腔期
  4. 咽頭期
  5. 食道期

こんなに細かく分けて考えて食べたことないです、今まで。

  1. 先行期:食物を取り込む前の過程。目で見て手で触り鼻で香りを認知。どのように食べるかを判断。
  2. 準備期:食物を口へ取り込み咀嚼し唾液と混合させ嚥下しやすい形態に整える。
  3. 口腔期:咀嚼した食塊を口腔から咽頭へ送り込む。この時、口唇を閉じる事。口の奥に食塊を送り込むために舌を口蓋に押し付ける。
  4. 咽頭期:嚥下反射が起こる過程。(反射とは意識しているわけではないので高齢になるとにぶくなる)咽頭期の中でさらに過程が分かれます。
    ①軟口蓋が後方へ動き鼻咽腔を閉鎖(鼻への逆流防止)
    ②咽頭蓋が倒れて咽頭(気道)を閉鎖
    ③食道入口部が開く
  5. 食道期:食道入口部を通過して食塊が食道へ入る。

ここまでが嚥下の工程。

次は「なぜ誤嚥が起きるか?」です。

誤嚥には3つのタイプがあるようです。

  1. 嚥下前誤嚥:食べ物を咀嚼中に、口の中に食べ物を留めておけず嚥下反射が起こる前に喉の奥へ流れ込む。この時汁と形がある食べ物のうち汁だけが流れてしまう。
  2. 嚥下中誤嚥:咀嚼が終わって嚥下しているときに何らかの理由で咽頭蓋が気道を防ぐタイミングがずれ気道へ食べ物が入ってしまう。
  3. 嚥下後誤嚥:海苔やわかめ、かつお節など薄くて付着しやすい食べ物が食後しばらくたってから喉の粘膜からはがれて気道へ入る。

3に関しては「あるある」と思いえますね。これに関しては食べた後トロミ水やゼリーを食べると防げるようです。

食事の正しい方法、安全な姿勢や食事の準備、介助の手順も聞きました。

  1. 高齢者の食事の特徴
  2. 食事の時の正しい姿勢
  3. 食事をする前にすること
  4. 食事の介助の方法
  5. 正しく介助して食事を楽しい時間に

1.高齢者の食事の特徴

  • やわらかいものを好む→歯、あごの力が落ちている。喉の筋力が落ちている。
  • 乾燥したものは飲みにくい→唾液が少なく喉の筋力が落ちている。
  • 喉の渇きを感じにくい→自分から飲みたがらず脱水しやすい。
  • 濃い味付けを好むようになる→味覚、嗅覚の衰え。冷たかったり味が濃いと飲み込みやすい。
  • 胃もたれしやすい

2.食事の時の正しい姿勢

食事姿勢(クリックで拡大)

・ベット介助の姿勢

ベッドの上での食事 (クリックで拡大)

・あごの角度に注意が必要

あごの角度 (クリックで拡大)

3.食事をする前にすること

  • 排せつをすませる
  • 食事しやすい環境を整える
  • 口の中を清潔にする(食事前に歯磨き)
  • 唾液の分泌を促すトレーニング(アイスマッサージ:冷たい氷水をスポンジに含ませ口の中に入れてマッサージ)
  • 手を清潔にする(認知症の人は手で食べてしまう)
  • 安全な姿勢確保
  • 献立を説明

4.食事介助方法

  • 安全な体勢を確保
  • 介助者が隣に座る
  • 食事の前に水分を補給
  • 水分の多いものから食べる
  • 主食、副食、水分を交互に。ティースプーン1杯分。
  • 食事を急かさない。
  • 終了後は摂取量を確認。
  • 口腔ケア~リラックスできる状態へ。

5.正しく介助して楽しい時間を
・食事の時間は楽しみにもなれば、苦痛にもなりえます。

以上のようなためになる話の後に「健口体操」を教えていただきました。 こちらは実際に顔を思いっきり動かしての体操ですが絵心がないので割愛させていただきます。

次は管理栄養士の岩本さんのお話です。
村井クリニック内で「認定栄養ケアステーションうつのみや」を始め言語聴覚士の福田さんと利用者さんのみならず地域の方の栄養状態評価や特定保健指導も行っているようです。

食事や栄養の事で困っている事の相談に乗ってくれるようです。

QRコード
  • 食欲が出ない
  • 最近急に痩せた
  • 元気や意欲がなくなった
  • 噛むことや飲み込むことに問題がある
  • 管理栄養士に相談したいことがある

等々の相談に必要なサービスを提供してくれるそうです。

 

写真は管理栄養士の岩本さんお勧めの「トロミ付きビール」です(もちろん研修中なのでノンアルです・・・)

岩本さんによると高齢者は食べることが難しくなっても「ビール、マグロ、鰻」が口にしたい食品3品だそうです。確かにどれも美味しいですよね。
形状が多少変わっても、好きな食品を工夫して食べられるって幸せですよね。

また、お粥も実際に食べてみて、唾液が付いたスプーンを使用しているうちにお粥が唾液の酵素で分離し、誤嚥しやすい形状になることが分かりました。↑にも記入したように固形と水分では口から喉に流れる時間に誤差があります。

まだ飲み込む用意が自分の中で出来ていない時に水分だけ流れてきたらむせますね確実に、私。

その他、ほかの人から飲み物を飲ませてもらう体験もしました。
今回の研修は体験型でとても分かりやすくためになりました。

研修参加記録

特定事業所合同事例検討企画部研修会

R1年9月9日

あおば、ふれんど岡本、のん美里ホームながおか
「事例検討会を通してケアマネジメント力を高めよう」 ~野中式事例検討の実際を学ぶ~
講師:奥田亜由子(社会福祉士、主任介護支援専門員)
日本福祉大学・金城学院大学非常勤講師、日本ケアマネジメント学会理事 認定ケアマネジャー

今回は特定事業所である「あおば」「ふれんど岡本」「のん美里ホームながおか」さん主催の事例検討会に参加してきました。 
通常3事業所で行う研修なのでしょうが、素晴らしい先生もいらっしゃるので今回のように他の事業所にも門戸を開いていただけました。感謝です。

まずは、事例検討会の必要性をおさらい。
ケアマネジャーや地域包括支援センター職員中心に行った支援の振り返りを多くのメンバーで行うことで今後の支援に役立つ、気づきができる。
担当者が行った支援をほかのメンバーと共有する機会となり専門職の人材養成にもつながる。
多職種・多機関のチームメンバーが参加することで様々な視点や専門職としての意見・考えを聞くことができる。

事例検討会を積み重ねることで、支援困難事例の解決につながる方向性が明らかになり地域ケア会議での検討を地域包括支援センターに依頼し地域としての課題が見つかる場合もある。

そして支援を必要とするケアマネジャーの悩み、気持ち、考えは・・・
・支援困難事例でもとりあえずのサービスプランで対応。
・既存のサービスでは対応できない課題があって困る。(そうそう。介護保険サービスでなんでも対応できる訳ではないんです)
・地域ケア会議は、いつどうやって活用していいかわからない。(わかりませんね。関わりがないと)
・個々の感性と経験による判断になりがち。他者からの意見を基に事例検討したい。
・支援困難事例だと頭が混乱するので整理方法を得たい。(全くです)

地域ケア会議に至るまでの構造の試案として

  1. 事業所内での事例検討。ここがまず必要。ケアプランだけでは分からない考え方を理解。
  2. サービス担当者会議。利用者参加。会議での発言は事業所の意見。主任ケアマネジャーの役割が必要。
  3. 担当専門職中心の事例検討。ここが開けれていない可能性が高い。支援困難な場合、地域包括の支援開始。
  4. 専門職での地域ケア会議。事例検討。スーパーバイザー、コンサルタント、主任ケアマネジャー、他の専門職、PT、OT、薬剤師、栄養士、弁護士等
  5. 地域ケア会議。インフォーマル支援者含むネットワーク形成。地域包括支援センター、市町村保険者の正式な会議。

1~5まで段階を踏むことが重要。

この地域ケア会議の積み重ね、個別ケースの地域ケア会議の積み重ねが事例研究につながり地域課題の抽出となります。

いきなり地域関係者を集めての地域ケア会議を開催することは無理があり専門職の方針の一致がある程度必要です。

ここまで書いてきた、困難事例の整理方法や、地域ケア会議などの事例研究に役立つとされているのが「野中方式による事例検討の展開」です。
(野中式事例検討とは、日本福祉大学研究フェロー、日本精神障碍者リハビリテーション学会長等を歴任された故野中猛先生が生み出し全国各地で実践されている事例検討の方法との事です)

  1. 何のために事例検討するのか
  2. 「野中方式」事例検討の特徴
  3. 「野中方式」事例検討の展開過程
  4. 「野中方式」事例検討の実際

まずは「1何のため」
事例検討会の必要性は細分化すると

  • 利用者の見立てと手立て
  • ほかの領域の知識を知る
  • 資源同士のネットワーク
  • 情緒的支えあい
  • 研修機能
  • 地域課題発見

上記6つを発展させ

  • 客観的情報の交流
  • 主観的感情の交流
  • 発想の交換
  • 当面の方針決定
  • 役割分担

となるようです。 そして事例検討の目的は

「事例と事例提供者の応援」です。

  • 提出理由、検討事項の明確化
  • 解決のための方向、方策、手立てを明らかに
  • そのためにアセスメントする
  • 本人の意向≠ニーズ

次に事例検討会のメリットは?

  • 情報の共有:関わるチームメンバーが直接または間接に把握している情報を集約し、共通認識を持てる。
  • 判断の共有:単なる情報の集積ではなく、判断の共有過程になる。
  • 価値の共有:支援の質、専門職の自主性、機関の目標及び支援内容などについて専門職の間で価値観を共有できる。

つまり、ケアマネジメント、相談支援、ソーシャルワーク、事例検討・・・
これらはなんのために?と問うてみると

「幸せが基本」 利用者の幸福追求権を追及ということです。

ここまでを踏まえて「野中方式」の事例検討の特徴です。

  • 事前資料無し、机無し→簡単(ホワイトボードや大き目模造紙を情報共有ツールに)
  • 事例提供者に質問→アセスメント力を磨く(どの場所を、どの角度、どの深さで)
  • 多様な質問、疑問、意見、自分にない見方、考え方との出会い→多様性、柔軟性

これらはフラットの関係、フラットな場づくりにも関心を持ってくれる人には心を開きます。

「野中方式」事例検討の特徴その2

  • 知らない知識、仕組み、チームとの出会い→領域を超える連携力
  • 事例提供者の頭の中にあることを再構成(この時話だけ聞いていると他の意見が出ません)→断片・・静止画・・動画
  • 明日から実際に何をするか→実践的。明日からの具体的な活動が見えてくる。

言葉だけで表現すると難しいですけど少し図があることで時間や広がりが分かりますね。

「野中方式」事例検討の展開③ 見立て(アセスメント)

  • 今は何がどうなっている?(現状の査定)・・その時、その言葉、その物
  • ここまで来た歴史
  • 後ろには何が隠れている?(背景理解)・・華の時代、人生転機
  • 核心、キモ(アセスメント要約、主要主題の把握)

ポイントとしては白紙から考え、あえて日常の領域をわきに置きリアルな人として、抽象化しない

「野中方式」事例検討の展開④ 手立て(プランニング)

  • あるべき姿、本人の希望・・「こうなりたい」私
  • 本人の強み、可能性・・やる気で取り組める
  • 目標と計画(本人の目標、本人の計画)(支援者の目標、支援者の計画)・・・本人の役割、まわりの役割
  • 役割分担とスケジュール

こちらのポイントは元気になるプラン、力がたまる・出てくるプラン、できそうなこと・現実的なこと

日本ケアマネジメント学会では、集団スーパービジョンの標準化を目指して以下の手法を掲げています

次は野中先生方式の事例検討会を図式化したものです。

そしてシートを活用した情報整理

  • 個別相談での活用(スーパービジョン)
    →ケアマネジャーからの相談、自分の事例の整理
  • 地域ケア会議、事例検討会での活用(グループスーパービジョン)
  1. ホワイトボードを使用してその場で情報を共有
  2. 会場からの質疑により気づきを促す
  3. 事例提供者の発言をもとに事実か推測かを明確にし利用者の全体像を把握するよう努める
  4. 事例提供者を中心に参加者が提案しプランニングすることができる
  5. 地域の多職種の参加が可能。重要なことは一人での判断ではなくチームアプローチ

事例を可視化する
生活側面ごとに情報を整理・アセスメント

↑で記入した生活情報分類シートは↓に分けられます 。

「野中方式」事例検討のルール~グランドルール~

  1. 場のルール
    ・守秘義務
    ・日常の立場、役割から離れて「頭を自由に」
    ・どんな質問、意見も安心して話せる環境
  2. 参加者のルール
    ・非難、批判しない
    ・質問は一人ひとつ
    ・ホワイトボードを見ながら(メモなし)
    ・できるだけパスしない
  3. 事例提供者のルール
    ・事例提供者は事実を回答
    ・推測、思いは事実と分けて
    ・「分からない」もok

質の良い「事例検討会」に参加して得られるもの

  • 徹底的な対象者理解
  • 地域も巻き込んだ多職種連携
  • ストレングス視点

そして情報・価値観・判断を共有する

地域課題の抽出

個別事例の支援方針作成をする中で、他の事例にも共通する地域課題が抽出できることがあります。地域の多職種、行政で解決が必要な課題。
目の前の支援と広い視野での地域支援、普遍的な課題を見抜く力、視点を身に着ける。

地域ケア会議の開催

個別事例のケース検討・多職種協同
 ↓ここからスタート
必要な地域包括ネットワークの構築
 ↓地域の力
個別課題から、地域課題への展開
 ↓制度・政策に反映させることも
既存の資源の再資源化
 ↓フォーマル・インフォーマルも
新たな資源開発

事例検討会は何回も回数を重ねることで深めることができるようになるようです。地域包括支援センター、ケアマネジャー、専門職チームで質の高い利用者支援ができるように取り組みを望まれています。
少人数での事例検討会から始めると良いようです。

講師の先生も素晴らしい方で
1人事業所ではなかなか行えない貴重な研修でした。

研修参加記録

第6回多職種連携研修会

R1年8月31日

「ライフプランRose:髙木明美ケアマネ」主催の多職種連携研修会に参加してきました。この研修会の理念はほかの機会にゆっくり説明します。

 今回のテーマは「知っているようで知らないことだらけの福祉用具貸与」
講師として「エフビー介護サービス株式会社宇都宮営業所:神尾さん」
「スペースケア:伊藤さん」「株式会社キガ:福田さん」
 まず居宅サービスとして利用できる「福祉用具貸与」をおさらいです。
種目は以下。

項番 種目 要支援1.2
要介護1
要介護
2~5
内容
1 車いす ・自走用標準型車いす
・普通型電動車いす
・介助用標準型車いす
・介助用電動車いす
2 車いす付属品 車いすと一体的に使用されるもの
・クッションまたはパッド
・電動補助装置
・テーブル ・ブレーキ
3 特殊寝台 サイドレールが取り付けられてあるものまたは取り付けが可能なもので次のどちらかの機能があるもの
・背部または脚部の傾斜角度が調整できる
・床板の高さが無段階に調整できる
4 特殊寝台付属品 特殊寝台と一体的に使用されるもの
・サイドレール ・介助用ベルト
・マットレス ・ベッド用手すり
・テーブル ・スライディングボード
・スライディングマット
5 床ずれ防止用具 ・送風装置または空気圧調整装備を備えた空気パッドが装着された空気マット
・水等によって減圧による体圧分散効果を持つ全身用のマット
6 体位変換器 空気パッド等を身体の下に挿入することにより、体位を変換できる機能があるもの
7 手すり 取り付けに関し工事を伴わないもの
8 スロープ 段差解消のためのもので、取り付けに関し工事を伴わないもの
9 歩行器 歩行が困難な方の歩行機能を補う機能があり移動時に体重を支える機能があるもの
10 歩行補助杖 ・松葉杖 ・多点杖
・カナディアンクラッチ
・ロフストランドクラッチ
・プラットホームクラッチ
11 認知症老人徘徊感知器 × 認知症の老人が屋外へ出ようとした時などセンサーが感知して家族や隣人等へ通報するもの
12 移動用リフト 床歩行式、固定式または据え置き式であり身体をつり上げまたは体重を支える構造があるもので、自力での移動が困難な方の移動を補助する機能があり、取り付けに住宅改修を伴わないもの
13 自動排泄処理装置
要介護
4,5のみ
次の要件をすべて満たすもの
・尿または便が自動的に吸引されるもの
・尿と便の経路となる部分を分割することが可能な構造を有するもの
・要介護者またはその介護を行う者が容易に使用できるもの
(尿のみの自動排泄処理装置は身体の状況により要支援1~要介護5の方に 貸与可能)

種目表を見て分かるように、これらの福祉用具を借りるために条件があります。例えば1~6、11,12の種目の貸与は要介護2~5の方が対象。
13に関しては要介護4,5の方が対象。

これらの対象者は日常生活において動きに制限がある方が多く要介護度が高くなることと連動していることから貸与可能対象者となっています。もちろん要介護度が高くとも貸与の必要のない方は無理に借りることはありません。借りたい方は担当のケアマネに相談しサービス担当者会議を経てプランを立ててもらうことも必要です。

 では、どうしたら要支援1,2、要介護1の方が1~6等の対象でない種目を借りることができるのでしょうか。
これら軽度者の方には身体の状況に照らして一定の条件に当てはまる場合貸与されることがあります。この場合もまずケアマネに相談。主治医への確認やサービス担当者会議での検討、保険者への申請を行い認可されると借りられます。
また借りることが可能な方でも借り方に条件があります。例えば2の車いす付属品。付属品のみでは借りることはできません。車いすを一緒にレンタルする、もしくは車いすを持っている等条件が必要です。
同様に4の特殊寝台付属品にも同じ条件があてはまります。

かなり面倒だなと思われるでしょうが、介護保険、皆さんの税金を使って1割~3割で借りるわけですから本当に必要な方に使ってもらえるための工夫と思ってください。
かなりざっくりと説明しましたがここまでが福祉用具貸与。

 次に「特定福祉用具購入費の支給」
こちらは入浴や排せつなどに用いる福祉用具の購入費用を限度額の範囲内で支給を受けられるものです。」
種目は以下。

項番種目内容
1腰掛便座・和式便器の上に置いて腰掛式に変換するもの(腰掛式に変換する場合に高さを補うものを含む)
・洋式便器の上に置いて高さを補うもの
・電動式またはスプリング式で便座から立ち上がる際に補助できる機能があるもの
・ポータブルトイレ(水洗の設置工事費用部分は自費)
2自動排泄処理装置の交換可能部品・レシーバー、チューブ、タンク等のうち、尿や便の経路となるもの
3入浴補助用具・入浴用いす ・入浴台 ・浴槽用手すり ・浴室内すのこ
・浴槽内いす ・浴槽内すのこ ・入浴用介助ベルト
4簡易浴槽空気または折り畳み式等で容易に移動できるものであって取水または排水のために工事を伴わないもの
5起動用リフトのつり具部分

 サービス費用のめやす
 1年間(4月~翌年3月)10万円を限度として、9割、8割、7割のいずれかの支給を受けます。
・介護保険施設や病院に入院・入所している方は(一時帰宅含む)支給を受けられません。退所日や退院日が決まっていれば1週間前の事前申請はできますが納品日は当日となります。
・販売業者の指定もあります。指定業者以外で購入した場合は支給の対象となりません。必ず事前に居宅介護支援事業者に相談してください。

 支給を受けるには福祉用具購入費の支給には受領委任払いと償還払いがあります。

 受領委任払い
 費用の1割、2割、3割(限度額を超える部分は全額)を福祉用具販売者に支払って福祉用具を購入する方法。
「支給の流れ」
 ①利用者は福祉用具販売者に受領委任払いによる福祉用具購入の手続きを依頼。
 ②福祉用具販売者は利用者の利用限度額及び購入予定の福祉用具が支給の対象になるか高齢福祉課の窓口で確認。
 ③利用者は福祉用具販売者に福祉用具にかかる代金の1割または2割または3割(限度殻を超える部分は全額自己負担)を支払い福祉用具を購入。
 ④福祉用具販売者は領収書(証)、福祉用具パンフレット等を添付して高齢福祉課に申請。
 ⑤後日、市が残りの代金を事業者に支払った旨の通知を送付。

 償還払い
 費用の全額を福祉用具販売者に支払って福祉用具を購入し、その9割または8割または7割(限度額を超える部分は全額自己負担)の支給を市に申請する方法。
「支給の流れ」領収書(証)、福祉用具パンフレット等を添付して高齢福祉課に申請を行い、後日支給を受ける。

つづいて「住宅改修の支給」・・要介護1~5の方、要支援1、2の方これは住居の段差を改修したり廊下や手すりを取り付けるといった改修費用を限度額の範囲内で支給されるもの。支給限度額は20万円(税込)。
住宅改修費の支給対象となる改修は下表。

項番項目
1手すりの取り付け
2段差の解消
3滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
4引き戸等への扉の取り換え
5洋式便器等への便器の取り換え
6その他1~5の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

・介護保険施設や病院に入所・入院している方(一時帰宅含む)は支給の対象になりません。
・新築や増築、老朽化に伴う住宅改修は支給の対象になりません。

上限額の考え方
 一生涯に原則20万円を限度としてその9割または8割または7割の支給を受けます。
 ただし「介護の必要の程度」の段階が3段階以上、上がった場合または転居した場合(住民票の異動を伴う)には、再度20万円を限度としてその9割または8割または7割の支給を受けられます。

3段階以上、上がった場合の考え方

初めて住宅改修に着工した日の要介護状態区分   3段階以上、上がった要介護状態区分
要支援1 要介護3,4,5
要支援2、要介護1 要介護4,5
要介護2 要介護5

支給を受けるには
 住宅改修費の支給には受領委任払いと償還払いがあります。(福祉用具購入と一緒ですね)
 すべての住宅改修について「改修前に市に申請し、事前に内容確認を受けること」が必要です。詳しくは居宅介護支援事業者または高齢福祉課に相談。

受領委任払い
 費用の1割または2割または3割(限度額を超える部分は全額自己負担)を施工業者に支払う。

償還払い
 費用の全額を施工業者に支払い、そのうち9割または8割または7割(利用限度額を超える部分は全額自己負担)の支給を市に申請。
「支給の流れ」
 ①利用者はケアマネジャーに相談。
 ②施工業者と改修内容と支払方法(受領委任払い、償還払い)の相談をする。(3者で)
 ③施工業者は住宅改修部分にかかる見積書を利用者に提示。
 ④居宅介護支援事業者または施工業者はケアマネジャー等の作成した理由書と先の見積書、改修前の部分の日付け入り写真、平面図(回収箇所を朱書きしたもの)とともに高齢福祉課窓口に申請書を提出(事前確認)
 ⑤施工業者は市から住宅改修承認通知書及び事前確認関係書類一式が届いた後住宅の改修を行う。
 ⑥利用者は施工業者に住宅改修にかかる代金を支払う。
 ⑦施工業者は住宅改修が終了後、事前確認書類一式に加え改修後の部分の日付け入り写真、領収書(証)等関係書類を高齢福祉課窓口に提出(事後確認)
 ⑧後日、市が保険給付分を利用者または施工業者に支払う。
 大切なのは事前申請。勝手に工事を進めてからの申請はダメです。

そしてケアマネとして関わることの少ない「小児の福祉用具制度」
こちらは健康保険法、児童福祉法、障害者総合支援法から支援を受けて利用
できます。今までの関わりは高齢者が中心でしたので、とても参考になる話で
した。

 補装具費支給事業や日常生活用具給付事業。
福祉用具の種類としては治療用装具、補装具、日常生活用具です。また用具に
より相談する機関が国、県、市と分かれます。

 日常生活用具の一例として特殊寝台が耐用年数8年、対象者は1・2級の
下肢または体肝機能障害者(児)の方で学齢時以上とあります。高齢者の介護保険
では貸与があり事業者も多々ありますが小児の福祉用具となると貸与の制度は
あっても対応できる事業者がないのが現状との事です。

ここまで研修を振り返り自分なりにまとめてみました。