研修参加記録

カイポケフェスタ2019(東京)

令和1年11月3日

介護保険法改正に向けた最新情報!

2021年度改正に向けて~どう変わる?今把握すべき重要ポイントとは~
東洋大学ライフデザイン学部:高野龍昭 准教授

はじめに、この研修に参加した2019年11月には新型コロナウイルスは流行していません。政府の打ち出した政策も、政策をまとめた高野先生の研修も新型コロナウイルス前です。それを踏まえてまとめを読み、今後の政策がこのまま進んでいいのか皆さんで考えていただけると幸いです。

研修を受けた時には今後の動きを少しでも早くキャッチしたくて東京秋葉原に話を聞きに行ってきました!

まずは

1:近年の介護保険制度の概観・課題

※高野先生の資料を基に作成

要介護度別に見た介護が必要となった主な原因

※高野先生の資料を基に作成

認知症の人の将来推計

※高野先生の資料を基に作成

日本老年医学会「フレイル」(出典:長寿医療研究センター)

「フレイル」の多面性(飯島勝矢)
(2020年4月現在NHKにおいて「医師が伝えたいこと」でも度々紹介されていますね。)

「フレイル」10月26日の研修でもまとめてましたね。
筋力増強のためには栄養が重要です!

さて
健康寿命=日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間(WHO,2000)
(かつては医療費が節約されると言われていました)
予防で健康寿命が延びるのは望ましいのですが、一方で予防は医療や介護が必要になる先送りさせることにとどまり、長期的には費用を増加させるものと考えられ費用抑制効果は懐疑的との見方もあります。
(例)特定検診・特定保健指導の医療費抑制効果=約200億円/年
  特定検診・特定保健指導にかかる費用=約230億円/年
(例)の金額を比べてみると、30億円赤字ですね。
予防で医療や介護の費用が効率化できるというのは現段階では期待にすぎません。

それでは、介護保険の総費用額と保険料の推移をグラフで見てみましょう。

第1号保険料基準額
第1期 → 第2期 → 第3期 → 第4期 → 第5期 → 第6期 → 第7期 → 2025年推計
2,911円 3,293円 4,090円 4,160円 4,972円 5,514円 5,869円 7,200円

※高野先生の資料を基に作成

2018年を見てください。遂に11兆円を超えました!
介護保険は全部が税金ではありません。ご存じですよね?
ザックリいうと半分は被保険者が支払った介護保険料。
あとの半分の50%が公費負担。
半分税金が財源と言っても、その額5兆円!!
これは、防衛関係の5兆円や、公共事業(道路など)4兆円と比べてみても成程大きな額です。

そんなこんなで介護業界は何にそんなにお金を使っているのと言われ改正の度に苦汁を飲まされます。

総費用等における提供サービスの内訳

※高野先生の資料を基に作成

サービスの内訳をみると施設(特養+老健+介護療養)34%と割合は大きいのですが、手が付けにくいらしいです。
そして、居宅(訪問介護~特定施設まで)44%のうちの中で断トツの通所介護12.7%が1番手を付けやすく訪問介護9.3%は2番目に手を付けやすい・・

要介護(要支援)認定者数・介護給付費総額・高齢者人口・後期高齢者人口・国民医療費(75歳以上分)・名目GDPの伸び~2000年度を100とした時の指数~

※高野先生の資料を基に作成

グラフ見ても分かるように「介護給付費総額」の急上昇!
人口の上昇よりも急ですよね
だから「介護保険には無駄が多い」と考えられてしまいます。
次に「社会保障給付費の見通し」です。(カッコ内指数は2018年度比)

※高野先生の資料を基に作成

介護の費用をGDP比でみると    社会保障費用合計をGDP比でみると
2018年度=1.89%         2018年度=21.5%
2025年度=2.37%(1.3倍)      2025年度=21.7%(1.01倍)
2040年度=3.26%(1.7倍)      2040年度=24%(1.12倍)

ここで言えることは「お金は何とかなるが人材確保が足りない」ということ。
でも、ここまで振り返ってみて、腑に落ちないことだらけですよね。

「介護保険には無駄が多い」と考えられて予算をカットされる

お給料が低い設定。もしくはカット。

大変な仕事なのに、低賃金では選ばれる仕事にならない。

介護職が選ばれない。

人材不足・・・

もう魔のスパイラルまっしぐら!!
良いんです、外国人労働者に働いてもらうことは。
日本の人口は減少しているんですから。

Only日本人だけでは、今後日本は成り立ちません。
だからと言って日本人が選ばない仕事を外国人に押し付けている感、半端ないですよね。

日本人が「大変だけど素晴らしい」と思える選ばれる仕事。そのうえで足りない人材を外国人に助けてもらう。
話がかなり脱線しました。

※ちなみにセミナーを受けたのは2019年11月ですが、これをまとめている2020年4月の今、新型コロナウィルスが世界的に大流行。
日本はコロナウィルスが蔓延している国々からの入国をストップ。
もちろん外国人実習生、労働者も入国できず。もしくは帰国という大変な状況に陥っています。
医療物資も輸入に頼っていたので不足状態。結果論ですがなんでも外国頼みは良くありませんね。

2025年問題ありますよね。25年以降も増えるんです。
(2015年の実数を0とした時のその後の伸び率)

※高野先生の資料を基に作成

(2015年の実数を0とした時のその後の伸び率)

※高野先生の資料を基に作成

(2015年の実数を0とした時のその後の伸び率)

※高野先生の資料を基に作成

要介護者等の推計1:2018~2025

※高野先生の資料を基に作成

※全国的には要介護高齢者数は2040年代まで増加。
一方、その伸びの地域差は今後一層拡大。

要介護者等の推計2:2018~2025

※高野先生の資料を基に作成

推移、推計ありますが、地域によって千差万別です。
ご自分の地域に今後何が起こるのかをそれぞれ考えることが重要なようです。
要介護者等の推計は首都圏が著しい結果になっています。

(2015年の実数を0とした時のその後の伸び率)

※高野先生の資料を基に作成

このグラフも、とっても怖い
2015年を全ての基準として(総人口や生産年齢人口、後期高齢者人口などなど)
2030年まで後期高齢者人口は増え続け、140%に。逆に総人口含め他の人口は下がり続ける。

だから「骨太方針2015における社会保障改革」では

  • 社会保障は歳出改革の重点分野
  • 社会保障給付の増加を抑制することは個人や企業の保険料等の負担の増加を抑制することにほかならず、国民負担の増加の抑制は消費や投資の活性化を通じて経済成長にも寄与(なんのこっちゃ・・)
  • 消費増税以外の国民負担増(社会保険料含む)は極力抑制
  • 国民皆保険制度は維持

「地域医療構想の推進」
団塊の世代が後期高齢者になり始める2022年~すべて後期高齢者になる2025年に向けて、地域医療構想に沿って、高度急性期・急性期から回復期や在宅医療等に大幅な医療機能の転換を進めていく必要。
今後、個別の病院名や転換する病床数等の具体転換方針の速やかな策定に向けて、各地域において2年間程度で集中的な検討を促進することとされている。

(数字は全て病床数:万床)
※高野先生の資料を基に作成

ケアサイクル論

なるものがあります(長谷川俊彦先生による高野先生の加筆修正)

もう少しデータをグラフで確認してみましょう。

2015年までは実績。2020年から推計です。 ※高野先生の資料を基に作成

※1995年までは「老人ホームでの死亡」は「自宅、その他」に含まれます。数字は全て%

※高野先生の資料を基に作成

ここまでのデータをもとに「骨太の方針2016における社会保障改革」

  • 世界に冠たる国民皆保険・皆年金を維持
  • 「経済・財政再生計画」に揚げられた医療・介護提供体制の適正化
    インセンティブ改革、公的サービスの産業化、負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化
    薬価・調剤等の診療報酬及び医薬品等に係る改革、年金、生活保護等に係る44の改革項目について改革工程表に沿って着実に改革を実行。
  • (潜在需要の顕在化の方策として)介護分野において個々の状態やニーズに応じた多様なサービス提供を実現する観点から、介護保険外サービスの活用を含め、多様な生活支援サービスの利用を推進。

*2015を踏襲しつつ「工程表」を順守する方針
*介護保険外および生活支援サービスの強調へ

そして今後の介護の方向性を表しているのが
「科学的介護に基づく介護に係る検討会」
開催趣旨:科学的な自立支援等の効果が裏付けられた介護サービスの方法論の確立、普及に必要な検討を実施
事務局:医務技監の下、老健局、医政局、保険局
座長:鳥羽研二(国立長寿医療研究センター理事長)
第1回:H29/10/12
第2回:H29/10/26①
第3回:H29/11月②~④
第4回:H29/12月⑤
第5回:H30/3月・中間とりまとめ

・今後のエビデンスの蓄積に向けて収集すべき情報の整理について

  1. 栄養
  2. リハビリテーション
  3. 主として介護支援専門員によるアセスメント:ケアプラン作成時のアセスメントの結果についてどのように情報収集するか等を議論
  4. ケアプラン:ケアプランを一つの介入と捉えた時、その効果に関する研究を行う上で必要な情報や行いうる研究の形等について議論
  5. 認知症

介護領域におけるエビデンスの蓄積、活用に必要なその他の事項について
介護領域のデータベースの内容
「社会保険総合データベース」

  • 要介護認定情報、介護保険レセプト情報が格納
  • 要介護認定及び請求・支払いの際に保険者が収集。H30年度よりデータ提供義務化予定
    「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業のデータ」
  • 通所リハビリテーション事業所、訪問リハビリテーション事業所からのリハビリテーション計画書等の情報を収集
  • 通称VISIT(monitoring & eValuation for rehabilitation ServIces for long-Term care)
    「上記を補完する介入、状態等のデータ」
  • 新たに構築。収集内容は主に本検討会で議論
  • 通称CHASE(Care HeAlth Status & Events)
  • 収集経路は今後、収集内容を踏まえて検討
  • 2020年度からの本格運用を目指す

「CHASEの初期仕様において収集の対象とする項目(抜粋)」
1基本的な事項(できるだけ多くの事業所等において入力されるべき項目)

  • 総論=既往歴、服薬情報、同居人等の数と本人との関係性、Barthel Index
  • 認知症=DBD13・Vitality Index
  • 口腔=食事の形態、誤嚥性肺炎の既往歴等
  • 栄養=身長、体重、提供栄養量、摂取量、血清アルブミン値、嚥下状況、多職種による栄養ケアの課題

2目的に応じた項目(報酬上の加算の対象となる事業所等において入力されるべき項目)

  • 総論=ADLやIADLに関する個別機能訓練等に関する項目
  • 口腔=摂食嚥下機能検査の実施や口腔ケアの方法、改定水飲みテストの結果などに関し、取得している加算の様式例等に含まれるもの

3その他の項目
総論=評価方法(包括的自立支援プログラム、居宅サービス計画ガイドライン、インターライ方式、R4)、FIM、興味のあるアクティビティ、「興味、関心チェックシート」の関連事項、ADLやIADL、認知機能、BPSD、痛みなどに関する項目(データ項目ver2.1)

  • 認知症=HDS-R、Zarit介護負担尺度、CGA7
  • 口腔=食事時のポジショニング
  • 栄養=必要栄養量(エネルギー、たんぱく質)
    低栄養のリスクレベル、体重減少の有無などに関し、取得している加算の様式例等に含まれるもの、握力、水分摂取量(モデル事業においてフィージビリティなどを検討)

細々書かれていますが、感覚だけの介護の計画は終わりの時代。
語弊がありますが誰でも同程度の計画を作成できる。(もちろん資格や経験は必須です)
そうなるためには、個々の中に蓄積されてきた経験値を個々の物だけにしないで
今流行りのビッグデータに一旦落とし込んでさらなる情報をかき集め、最終的に計画作成の道筋として共有される。計画でも介護でも同じです。
最後は人の温かさなどの加味も必要とは思われますが、誰が計画しても介護しても方法に大きな違いが生まれないのは良いことだと個人的に思いました。

以降、セミナー内容続きます。

2018年度の介護保険制度改正はひとつのターニングポイント

インセンティブ元年?
・保険者機能に応じたインセンティブ(2018年度施行)

・事業所の機能(サービスの質)に応じたインセンティブ(本格実施は次期)

・高齢者自身へのインセンティブ(?)

2018年介護報酬改定

  • 厳しい財政サイドからの締め付け
  • 厚労サイドは、診療報酬改定で「薬価引き下げ」財源確保し何とかプラス改定へ
  • 焦点であった「自立支援、重度化防止」「効率化」「適正化」は実質的な先送り
  • 財政的な見通しは依然として不透明

↓2021年改定がより厳しいものに?
これらのことを踏まえて下記からは

2:2021年度制度改正の動向

2021年度改正へ先送りされた課題

  • 軽度者(要介護2)までの給付のあり方
    ※訪問介護の生活援助・福祉用具・住宅改修の給付外し
    ※通所介護の総合事業移行
  • 財政的インセンティブの本格化
    ※保険者による自立支援・重度化防止対策
    ※事業者・施設の「サービスの質」に応じた報酬付け
    ※本人へのポイント付加
  • 医療・介護連携
    ※医療保険から介護保険への「付け替え」促進
  • 「混合介護」の普及・促進
  • 共生型サービスの拡大
    ※居住系やケアマネジメント
    ※障害福祉サービスとの統合の議論
  • 2割負担対象の拡大
    ※「資産の勘案」も含めた見直し
  • 生産性向上・業務効率化
    ※介護ロボットの本格導入
    ※ICT化の促進
  • 補足給付の見直し
  • ケアマネジメントの自己負担導入
  • 現金給付(家族支援)の導入
  • 人材確保対策
  • 被保険者範囲の見直し  etc・・・

「骨太の方針2018」概要

  • 基礎的財政収支(PB)の黒字化は2025年度を目指す
  • 社会保障費用の抑制の目安は高齢化による増加分に相当する伸びに収め「工程表」の遵守を
  • 「全世代型社会保障の構築」に向け、少子高齢化対策や社会保障に対する安定財源を確保するとともに、現役世代の不安等に対応し、個人消費の拡大を通じて経済活性化につなげるためには2019年10月に予定されている消費税率の引き上げを実現する必要がある
  • 「人づくり改革」介護離職ゼロに向けた介護人材確保のため、介護職員のさらなる処遇改善を進める
  • 「生産性革命」「新たな外国人材の受け入れ」
  • 「ケアマネジメントの質の向上と利用者負担の導入」「介護施設・事業所の大規模化」「介護保険の利用者負担増」

つづいて
「骨太方針2019」抜粋1

  • 今後の財政運営:2020年ごろの名目GDP600兆円経済と2025年度の財政健全化目標(債務残高GDP比の安定的な引き下げ)の達成を目指す
  • 3つの視点
    ①潜在成長率の引き上げによる成長力の強化
    ②成長と分配の好循環の拡大
    ③誰もが活躍でき、安心して暮らせる社会づくり、人づくり革命・全世代型社会保障

「骨太方針2019」抜粋2

  • 全世代型社会保障
    ①70歳までの就業機会確保
    ②中途採用・経験者採用の促進
    ③疾病・介護の予防
     (1)疾病予防促進について
      ・保険者努力支援制度(国民健康保険)
      ・後期恋礼者支援金加減算制度(健保組合)
     (2)介護予防促進について
      ・介護インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)
     (3)エビデンスに基づく政策の促進

「骨太方針2019」抜粋3

  • 共生社会づくり
    ◇高齢者・障碍者虐待の早期発見、未然防止やセルフネグレクトの実態把握等の観点から、関係機関の専門性の向上や連携の強化、体制の整備を図る。生活困窮者への包括的な支援体制の整備を推進する。
    ◇「認知症施策推進大網」に基づき、認知症と共生する社会づくりを進める。また成年後見制度の利用を促進するため同大網も踏まえ、中核機関の整備や意思決定支援研修の全国的な実施などの施策を総合的・計画的に推進する。
    ◇性的指向、性自認に関する正しい理解を促進するとともに社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進める。デジタル格差の無いインクルーシブ(包摂的)な社会を実現するため高齢者、障碍者等に対するICT利活用支援に取り組む。

「骨太方針2019」抜粋4-1
<社会保障(基本的考え方)>

 年金及び介護については必要な法改正も視野に2019年末までに結論を得る。医療等のその他の分野についても、基盤強化期間内から改革を順次実行に移せるよう、2020年度の「骨太方針2020」において給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめる。
 人生100年時代を迎え、少子高齢社会の中で生き方、働き方の多様化に対応できる持続可能な社会保障制度へと改革していく必要がある。議論を進めるにあたっては、いわゆる「支える側」と「支えられる側」のリバランスと言う観点や個人の自由である多様な選択を支え、特定の生き方や働き方が不利にならない「選択を支える社会保障」と言う考え方も含め年齢的にとらわれない視点から検討を進めるとともに、自助・共助・公助の役割分担の在り方、負担能力や世代間・世代内のバランスを考慮した給付と負担の在り方等の観点を踏まえて行う。

「骨太方針2019」抜粋5-2
(予防・重症化予防・健康づくりの推進)

  1. 健康寿命延伸プランの推進
    健康寿命延伸プランを推進し、2040年までに健康寿命を男女ともに3年以上延伸し75歳以上とする事を目指す。
  2. 生活習慣病・慢性腎臓病・認知症・介護予防への重点的取り組み「認知症施策推進大網」に基づき、「共生」を基盤として予防に関するエビデンスの収集・評価・普及、研究開発などを進めるとともに、早期発見・早期対応のため、循環型ネットワークにおける認知症疾患医療センターと地域包括支援センター等との連携を一層推進するなど、施策を確実に実行する。
     高齢者一人一人に対し、フレイルなどの心身の多様な課題に対応したきめ細やかな保健事業を行うため、運動、口腔、栄養、社会参加などの観点から市町村における保健事業と介護予防の一体的な実施を推進する。高齢者の通いの場の活用など、介護予防の取り組みのさらなる推進に向け、介護保険制度の保険者機能強化推進交付金の抜本的強化を図る。

「骨太方針2019」抜粋5-3
(医療・介護制度改革)

 持続可能な社会保障制度の実現に向け、医療・介護サービスの生産性向上を図るため、医療・福祉サービス改革プランを推進するとともに、地域包括ケアシステムの構築と併せ、医療・介護提供体制の効率化を推進し、勤労世代の負担状況にも配慮しつつ、後期高齢者簿増加に伴う医療費の伸びの適正化や一人当たり医療費の地域差半減、介護費の地域差縮減を目指す。
 診療報酬や介護報酬においては、高齢化・人口減少や医療の高度化を踏まえ、下記の各項目が推進されるよう適切に改善を図るとともに、適正化・効率化を推進しつつ、安定的に質の高いサービスが提供されるよう、ADLの改善などアウトカムに基づく支払いの導入等を引き続き進めていく。

「骨太方針2019」抜粋5-4
<保険者機能の強化>

 介護の保険者機能強化推進交付金についても、アウトカム指標の割合の計画的引上げ等とともに、介護予防などの取り組みを重点的に評価するなど配分基準のメリハリの強化やさらなる見える化を通じて、保険者へのインセンティブを強化する。
 また、第8介護保険事業計画期間における調整交付金の活用方策について、地方自治体関係者の意見も踏まえつつ、関係審議会等において検討し、所要の措置を講ずる。
 住所地特例制度の適用実態を把握するとともに、高齢者の移住促進の観点も踏まえ、必要な措置を検討する。

「骨太方針2019」抜粋5-5
(給付と負担の見直しに向けいて)

社会保障の給付と負担の在り方の検討にあたっては、社会保障分野における上記の「基本的な考え方」を踏まえつつ、骨太方針2018及び改革工程表の内容に沿って、総合的な検討を進め、骨太方針2020において、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめる。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋1)財政制度審議会(2019/6)

 社会保障の伸びの抑制については「新経済・財政再生計画」で定められた社会保障関係費の実質的な増加を高齢化と言う人口動態による増加分に相当する伸びに収めるという方針を、引き続き着実に達成していく必要がある。そのためには昨年末に取りまとめられた「新経済・財政計画会改革工程表2018」に掲げられている改革項目について、各項目の進捗状況につき、一定の期限を区切って検証を行うとともに、遅れが生じた項目については速やかに改善策を講じるなど、厳格な管理を実施すべきである。
 また2020年度に取りまとめられる予定の「経済財政運営と改革の基本方針」においては、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策をとりまとめ、加えて「基盤強化期間」内から実行に移していくこととされている。これは社会保障関係費の伸びを抑制し、ひいては2025年度のプライマリーバランス黒字化を達成するうえでも重要な取り組みであり、改革の内容・実施時期を明確にしたうえで進めていくことが不可欠である。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋2)財政制度審議会(2019/6)

 介護保険制度については、これまで保険給付の範囲の見直し、介護給付の適正化・効率化、利用者負担の引き上げ等の改革に取り組んできたものの、高齢化の進展等により、介護保険制度の導入時から総費用や保険料負担の増加に歯止めがかかってない。
 このため、次期介護保険制度改革においては、今後の高齢者の増加、現役世代(支え手)の減少を見据え、制度の持続可能性を確保し、さらなる上昇が見込まれる保険料負担の増加を抑制する観点から、改革に着実に取り組む必要がある。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋3)財政制度審議会(2019/6)

<保険給付範囲の在り方の見直し>

  1. 軽度者へのサービスの見直しの状況
    軽度者へのサービスについては平成27年度から平成30年度末にかけて訪問・通所介護サービスの要支援者に対する介護予防給付を、国による一律の基準によるサービス提供ではなく、各地方公共団体の創意工夫で、多様な主体による地域の実情に応じたサービスの提供を可能とする「地域支援事業」に移行してきた。現在、利用者のサービス利用日数を維持しつつ、次第に従前より人員配置などの基準を緩和したサービスの提供が拡大・給付しつつあり、この以降により、サービスの質を確保しつつ介護給付費の伸びが一定程度抑制されることが期待されている。
     要介護1・2の軽度者への介護給付については、要支援者向けサービスでは、要支援者向けサービスでは地域支援事業に移行した通所介護や訪問介護が全体の3割超を占め、特に訪問介護では、掃除や洗濯等の生活援助サービスの占める割合が約半分を占める状況にあり、さらに給付の重点化・効率化を進めつつ、質の高いサービスを提供していくことが可能である。
  2. これまでに取り組んできた主な事項
    こうした地域支援事業への移行の他、平成27年度より特別養護老人ホームへの入所者を原則要介護3以上の高齢者に限定することや、平成30年10月より福祉用具の貸与価格の上限を設定すること等の見直しに取り組んできた。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋4)財政制度審議会(2019/6)

  • 主な改革の方向性
    長期にわたり介護保険給付の増加が見込まれることを踏まえれば、要介護度・要支援度の軽重に関わらず同じ保険給付率となっている制度を改め、小さなリスクについては、より自助で対応することとすべきである。加えて、サービスの質を確保しつつ、地域の実情に応じた多様な主体による提供を推進する観点から、要支援者向けサービスの地域支援事業への定着・多様化にも引き続き取り組む。
     また、軽度者のうち、残された要介護1・2の生活援助サービス等についても、第8期計画期間(令和3年度~令和5年度)中のさらなる地域支援事業への移行や、生活援助サービスを対象とした支給限度額の設定または、利用者負担の引き上げ等について、具体的に検討していく必要がある。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋5)財政制度審議会(2019/6)

<保険給付の効率的な提供>

  1. 介護費の地域差の状況等
    要介護認定率や一人当たり介護給付費については、性別・年齢階級・地域区分を調整してもなお大きな地域差が存在している。認定率については、高位20保険者と比較すると2.4倍、一人当たりの給付月額についても同様に比較すると2.2倍の開きがある。
  2. これまでに取り組んできた主な事項
     インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)を、平成30年度から創設し、以来、毎年度200億円の国費を投じて、保険者による自立支援や重度化防止等に向けた取り組みを推進するための財政インセンティブを付与している。
     しかしながら、インセンティブ交付金交付する際の基準となる指標についてH30年度の評価結果実績を見ると、ひとりあたり給付月額が平均よりも高い5団体と低い5団体で比較すると、一人あたり給付月額が高い保険者の地域の方が獲得したポイントが高くなっているなど、現時点では、介護給付費の地域差縮減に向けたPDCAサイクルが必ずしも確立されていないようにうかがえる。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋6)財政制度審議会(2019/6)

<主な改革の方向性>

介護の地域差縮減に向けては、介護費適性の観点から、インセンティブ交付金への適正なアウトカム指標の設定・活用や配点のメリハリ付けを行うことで、保険者機能のより一層の強化を進めるべきである。また、調整交付金については、保険者機能のより一層の底上げを図るため、今年度中に結論を得て、第8紀からインセンティブとしての活用を図るべきである。
 さらに、2号被保険者の保険料財源の配分についても、保険者機能の発揮を促す仕組みとし、給付と負担の牽制効果を高める観点から、介護予防・重症化防止の取り組み状況等を評価したうえでメリハリ付けし、保険者に傾斜配分する仕組みを検討すべきである。
 このほか、保険給付の効率的な提供に向けては、地域医療構想を踏まえた介護療養病床等の介護医療院等への6年間の経過措置期間内での着実な転換、在宅サービスの保険者等の関与の見直し、介護事業所の経営効率化の推進と言った提供体制の改革に向けた取り組みに加えて、介護報酬改定に係るPDCAサイクルの確立、介護サービスにおける民間企業の参入とサービス価格の透明性向上・競争推進など、公定価格の適正化に向けて取り組む必要がある。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋7)財政制度審議会(2019/6)

<高齢化・人口減少下での負担の公平性>

  1. 介護保険費用の構造
    介護保険費用については令和元年度予算において年間11.7兆円、年率4.7%で伸びているが、その財源は公費負担5.9兆円(50.4%)、1号保険料(65歳以上)2.4兆円(20.5%)、2号保険料(40~64歳)2.5兆円(21.5%)により大宗がまかなわれ、残りを利用者負担0.9兆円(7.6%)により賄う構造となっている。また65歳以上の者の要介護認定率は2割弱であり、介護サービスを実際に利用している者と保険料のみを負担している者が存在している。利用者負担の詳細を見ると、受給者全体658万人の約9割が1割負担となっている。
  2. これまでに取り組んできた主な事項
    介護の利用者負担については、平成27年8月から年金収入等が280万円以上の利用者に2割負担を導入し、平成30年8月から年金収入等340万円以上の利用者に3割負担を導入した。このほか、平成27年8月からは、介護施設等に入居する低所得者向けの補足給付の資格要件に預貯金等の試算要件を追加し、平成29年8月からは、介護納付金(2号保険料)について、加入者割から報酬額に比例した負担(総報酬割り)に段階的に移行するなど、能力に応じた負担となるよう、取り組みを進めてきた。

令和時代の財政の在り方に関する建議(介護保険制度関連抜粋8)財政制度審議会(2019/6)

<主な改革の方向性>

 介護保険制度については、制度の持続可能性や給付と負担のバランスを確保する観点から、所得・資産などに応じた負担となるよう推進していく必要がある。このため、利用者負担を原則2割とする事や利用者負担2割に向けその対象範囲を拡大するなど、段階的に引上げを実施すべきである。
 また、補足給付については、在宅サービス受給者と施設サービス受給者との負担の権衡や世代間の公平性を確保するため、実態調査等を通じ、住宅等の資産の追加、預貯金等に係る基準の見直しも検討すべきである。
 このほか、ケアマネジメントについても、世代間の公平性の観点等も踏まえ、利用者負担を設けるとともに、評価手法の確立や報酬への反映を通じて、質の高いケアマネジメントを実現する仕組みとすべきである。
 加えて、現在、介護老人保健施設、介護療養病院、介護医療院の多床室については、現在、質量相当分が保険給付の中に含まれたままであり、これを除外する見直しをする必要がある。

いかかでしたか?高野先生はここまで審議会での内容を細かく紹介してくれました。

終わりに

2021年度介護保険制度改正:最大の争点をどうぞ

  • 要介護1,2の一部サービスの保険給付除外(総合事業へ移行)
    通所介護/訪問介護(生活援助)/福祉用具貸与/特定福祉用具販売/住宅改修
  • ケアマネジメントの利用者負担導入
  • 2割負担層・3割負担層の拡大
  • インセンティブの拡大
    ~調整交付金に保険者機能評価を包含
    ~介護報酬による利用者の心身機能維持/改善の評価拡大(CHASE重視)

介護保険制度の今後(考察)

介護保険制度は、医療保険との連動性を高めるため、次の3点に比重を移していく。

  1. 重度者(認知症高齢者含む)の具体的ケア
  2. 看取り
  3. 心身の機能回復のための訓練

財政面からは、利用者の費用負担をより多く求めていくとともに、費用の抑制に向けて「裁量的経費」(総合事業など)の部分を増やす(保険給付の範囲の縮小を行う)ほかなく、それによって給付費用の増大に歯止めをかけようとする。

2035年の介護保険制度

  • 2025-30年までに(政府方針からほぼ明らか…)
  • 利用者負担は医療保険と同一に
  • 要介護2までの福祉系サービスは「総合事業」に
  • 要介護2までの福祉用具、住宅改修、訪問介護の生活援助は保険給付外に
  • 入所施設は医療的ケア、看取り、機能訓練が強調される
    →要介護2までは医療系サービスだけが保険給付?
    →要介護3以上の入所サービスは極めて医療に接近
  • 2030-35年には(あいまいながら・・)
  • 介護保険と医療保険の境界は不明確に(連携の強調)
  • 過疎化により地方の市町村では保険運営困難に

 フェスタを振り返り現在4月下旬。世界中で新型コロナウイルスが大流行して、国内でも医療崩壊が叫ばれ、最近は介護崩壊も騒がれ始めています。
介護現場から人手不足との声を受けて厚生労働省が同法人から人を移動させて対応するように答えてる一幕がありました。でも移動させられるような人材は法人内に余っていません。そもそも移動できる人材がいるような大きな法人でないと対応できない方法ではありませんか?

 その他にも、休業要請を受けないデイサービスでも感染を恐れ自主休業を選ぶ事象所が多数。その結果かどうかは定かではありませんが、認知症が進行したり、筋力が衰えたりする方がいるとメディアで取り上げられています。前述してきたようなサービス抑制を今回のコロナ騒動はギュッと圧縮した形で表しています。必要ないサービスはあるかもしれない。だからと言って一律不必要とカットするのは如何なものでしょう。

このフェスタの講師、高野先生もNHKなどで何度もご意見を聞かれ今後の介護サービスを支える人材についてお話しされていました。今までも何度となく介護保険は制度改正を余儀なくされ大抵報酬は減額されてきました。そんな経緯があり介護保険サービスは慢性的な人材不足。新型コロナウイルス対応で学校も休校。子供たちがお家にいるので仕事を休むことになり更に人手不足。

 安倍首相は医療職に手当てをつけると発言ありましたが、介護はどうなんでしょう?
介護サービス費用を抑制したい気持ちは理解できますが、今回のような感染症が大流行した時に、外国に頼り切っている現在のスタイルでは対応しきれないのではないのでしょうか?まずは自国の中で人手を確保する、加えて魅力的な仕事として選ばれる、そんな対応が必要になっています。

 安倍首相は一旦30万で予算が通った給付金を1人10万円にしました。一度決まっても変更できるんです。介護保険制度改正も何度でも考え直して欲しいです。